HOME NEW TRENDS 絵本作家・酒井駒子、初の個展。洗練された筆致が紡ぐやさしい物語に出会う
絵本作家・酒井駒子、初の個展。洗練された筆致が紡ぐやさしい物語に出会う

絵本作家・酒井駒子、初の個展。洗練された筆致が紡ぐやさしい物語に出会う

4月10日(土)~7月4日(日)まで、立川市のPLAY! MUSEUMで企画展示「みみをすますように 酒井駒子」展が開催中だ。酒井駒子は、繊細な情景描写と詩的な文章で多くの人を魅了する絵本作家。今回が初の本格的な個展となり、海外でも高く評価される静謐な筆致を間近に観られる、待望の機会だ。その愛おしく、あたたかな世界観に触れて、心洗われる時間を過ごそう。

大人も魅了される洗練された絵と詩的な文章

絵本作家の酒井駒子は「よるくま」「金曜日の砂糖ちゃん」(いずれも偕成社)などで知られる。ページをひらけば、ぬくもりや質感まで感じられるような美しい筆遣いに息をのみ、描かれた子どもたちや動物たちの愛らしい姿に心惹かれる。ガラス細工のように繊細でありながら、同時にどこか親密さを感じる画風が魅力的だ。

そして、洗練された絵と響きあう詩的な文章から伝わる切なさ、やさしさ、深い愛情には、心をじんわりとあたためられる。子どもだけでなく、多くの大人も魅了される作品ばかりだ。日本絵本賞をはじめブラチスラバ世界絵本原画展で金牌、オランダ「銀の石筆賞」を受賞するなど、国内外でも高い評価を得ている。

『よるくま』原画(偕成社、1999年)
『金曜日の砂糖ちゃん』原画(偕成社、2003年)

森の中、街の中をめぐるように約250点の原画と出会う

「みみをすますように 酒井駒子」展では、これまでに刊行された20冊以上の絵本を中心に、約250点の原画を厳選して展示。その美しい世界を一挙に、間近に観られる初めての機会となる。

会場は「ひみつ」「はらっぱ」「くらやみ」「こども」など6つのキーワードに分けて空間が構成され、酒井が制作を行う山のアトリエ周辺の映像や音、酒井が大切にしている小さなおもちゃやオブジェが配されている。森の中、街の中を散歩するようにゆったりとめぐるうちに作品に引き込まれ、気づけば“みみをすますように”絵とことばにじっくりと向き合える展覧会だ。酒井駒子の紡ぐ、切なくも美しい、そしてやさしい物語に、心洗われる時間になるだろう。京都在住のフランス人ユニット2m26が手がけた会場デザイン にも注目だ。

『ビロードのうさぎ』原画(ブロンズ新社、2007年)
『くまとやまねこ』原画(河出書房新社、2008年)

また酒井駒子作品の特徴のひとつに、黒く下塗りした上に描く手法があるが、これは2000年刊行の「ぼく おかあさんのこと…」(文溪堂)から定着したもの。黒い下塗りによってもたらされる細やかさと粗さの共存は、作品にいっそうリアルな手触りをもたらす。時には段ボールやボール紙といった素材が使用されており、「BとIとRとD」(白泉社)で用いられたコラージュの手法も興味深い。
その生き生きとした筆遣いや、繊細な表情をもっとも感じられるのは生原画でこそ。本展覧会でもしっかりと目に焼き付けたいポイントだ。

『ぼく おかあさんのこと…』原画(文溪堂、2000年)
『BとIとRとD』原画(白泉社、2009年)

作品の息吹まで感じられる原画の躍動感に触れ、美しい情景とどこか切なく、深くやさしい物語たちに大接近できる待望の機会。この展覧会をじっくりとめぐれば、忘れていた気持ちを思い出すような、心あたたまる時間を過ごせるだろう。

「みみをすますように 酒井駒子」展 展覧会ビジュアル