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HOME SPECIAL 今日を愉しむモノゴト 日本の国技・大相撲は実況が愉しい。ライブで学ぶ相撲の所作と文化
日本の国技・大相撲は実況が愉しい。ライブで学ぶ相撲の所作と文化

VOL.30 日本の国技・大相撲は実況が愉しい。ライブで学ぶ相撲の所作と文化

日本の国技である大相撲は、スポーツ(格闘技)として楽しめることはもちろん、テレビ中継の実況・解説を通じて日本の伝統文化や歴史を知り、体験することができるのが面白い。今日は、他のスポーツとは一味違う、大相撲ならではの楽しみ方を紹介しよう。

目次

    ① 関取が土俵上に勢揃い。お披露目の儀式「土俵入り」で推し力士を見つける

    画像:iStock.com/m-ikeda

    大相撲にはさまざまな儀式がある。たとえば足腰を鍛える「四股」の所作は、“大地の邪気を払い豊作を祈る”という意味が込められている。これらは、相撲が神事としての側面も持つ証でもあるのだ。

    十両以上の地位になると行われる「土俵入り」も、そんな儀式のひとつである。ちなみに十両以上の力士は関取と呼ばれ、一人前の力士として付け人が付けられるほか、日本相撲協会から月給が支給されるようになる。幕下以下の力士には給料が出ない。厳しい世界である。

    そんな関取衆が取り組み前に勢揃いしてお披露目される「土俵入り」は、大相撲を楽しむ上で見逃せない儀式だ。化粧廻しを着けた力士が一人ずつ、紹介アナウンスとともに土俵に上がっていく。中継を見ていると、表情や体つきの違いがはっきりと見て取れる上に、実況アナウンサーが注目ポイントやちょっとした裏話を紹介してくれることがある。ここで自分なりに“推し力士”を見つけると、取り組みがいっそう楽しくなる。

    また、所作にも注目だ。土俵の周りを囲むように円形に並んだ力士が、一斉に拍手を打って万歳のようなポーズをする。この所作にはもちろん意味があるのだが、それも中継を見ていると、運が良ければ解説を聞くことができる。

    ②【歴史・伝統の粋】力士の最上位・横綱のみが行える「横綱土俵入り」は必見

    画像:iStock.com/PicturePartners

    十両力士の土俵入りが終わると、十両力士の取り組みが行われる。それが終われば、次は幕内力士の土俵入りである。大関・関脇・小結の三役を含む幕内力士の土俵入りも、十両と同様に勢揃いしてお披露目されるのだが、力士の最上位たる横綱は違う。幕内土俵入りが終わった後に、横綱だけのまったく別の儀式として「横綱土俵入り」が行われるのだ。

    この「横綱土俵入り」は、歴史と伝統、そして横綱の威厳を存分に感じられるのでぜひ見ておきたい。

    まず入場から違う。行事を先導に入場してくるのは十両・幕内土俵入りと同じだが(ちなみに先導する行事も最高位の立行事である)、横綱の前後には「露払い」と「太刀持ち」を従えている。これは、その昔大名などの貴人が、道を歩く際に露で濡れた草花などに触れないように先導する者(露払い)と刀を持って控える小姓(太刀持ち)を従えていたことに由来している。

    入場の時点で他の力士とは別格の様相を呈するのだが、注目は土俵に上がってからだ。真っ白の麻で綱打ちされた“横綱”を締めた横綱は、独特の所作を繰り広げていく。この所作には「雲龍型」と「不知火型」というふたつの型があり、それぞれ意味するものが異なるのだが、これも中継を見ていると運が良ければ解説してくれるのでここでは割愛する。力強い四股と“せり上がり”は一番の見せ場でもあるので注目しておこう。

    ちなみに、長らく「不知火型」の横綱は短命だというジンクスがあった。しかし、第69代横綱の白鵬がそのジンクスを打ち破り、36歳にして歴代最多45回目の優勝を達成するなど、歴史に残る大横綱として君臨している。また、来場所は照ノ富士が横綱に昇進し、白鵬と同じ「不知火型」の土俵入りを行うことが有力となっている。ふたりの横綱の土俵入りに注目して、ちょっとした違いを見つけてみるのも面白いかもしれない。

    ③ その場所の注目ポイントや相撲の歴史紹介など…さまざまな解説が聞ける「中入り」

    画像:iStock.com/c11yg

    十両の取り組み終了から幕内の取り組み開始までの休憩時間を「中入り」といい、この間に幕内土俵入りと横綱土俵入りが行われる。そして、横綱土俵入りが終わってから幕内の取り組みが始まるまでの時間に、NHKのテレビ中継では特集企画が放送される。

    この特集企画では、注目力士のインタビューや場所の注目ポイントの解説、過去の名勝負、相撲の歴史紹介など、さまざまな情報を得ることができる。初めて大相撲を見る人でもわかりやすい内容に構成されていて、知識が豊富な熟練アナウンサーの解説とともに楽しめるので、大相撲中継を見る際にはぜひとも押さえておきたいポイントだ。

    ④ 緊張感が最高潮に達する「仕切り」、一瞬にすべてを懸ける「立ち合い」

    画像:iStock.com/allanswart

    最後に、取り組みで注目してほしいポイントを紹介する。対戦する力士が土俵上で向かい合うと、「仕切り」を行う。これは、力士同士が呼吸を合わせて「立ち合う」ためのルーティンのようなものだ。塩をまき、蹲踞(そんきょ)の姿勢で向かい合い、立ち上がって目を合わせ、腰を落として両手をつく。相撲は両者が呼吸を合わせ、両手をついた時点で立ち合いが成立する。よく行事の「はっきよい」の掛け声で立つものだと思っている人がいるが、それは間違い。その逆で、力士同士の呼吸で立ち、成立した時点で行事が掛け声を発するのだ。

    幕内の場合、取り組みごとに4分の制限時間が設けられていて、両者の立ち合いが成立するまで仕切りを繰り返す。ほとんどの取り組みは制限時間いっぱいになってから立ち合うのだが、まれに制限時間前に立つこともあり、これがとても盛り上がって面白い。観客はどよめき、実況も興奮気味に「おっと立った!」などと叫ぶ。当然、見ているこっちも突然の立ち合いに驚くのだが、よくよく見ていると、仕切りの最中に“立つ予感”のようなものが感じられるのだ。

    たとえば、時間前なのに明らかに顔が紅潮して気合いがみなぎっていたり、両者がしきりにアイコンタクトを交わしていたり、阿吽(あうん)の呼吸のようなものが見えてくる。だから、仕切りは一瞬たりとも見逃せない相撲の醍醐味のひとつなのだ。

    そして、呼吸が合うと立ち合って取り組みが始まる。相撲は立ち合いで勝負の9割が決まるといわれるほど、この一瞬にすべてが懸かっている。大男同士がぶつかり合う激しい音は中継でもはっきりと聞こえて手に汗を握るし、まともにぶつからず奇襲に打って出る力士に思わず「あっ」と声が出そうにもなる。

    緊張感が最高潮に達する「仕切り」から「立ち合い」までの流れにしっかりと目を凝らして、勝負の行方を楽しもう。一番、二番と取り組みを見ているうちに、気付いたら相撲の虜になっているに違いない。

    メイン画像:iStock.com/mizoula