10杯の日本酒をテイスティングするだけで、自分の好みがわかるAIテクノロジーが「YUMMY SAKE」だ。利用者としては、種類豊富で文脈の多い日本酒との距離を一気に縮められるわけだが、どうやらこれは、作り手側にとってもメリットのあることらしい。
日本酒に詳しくなるにつれ、どこで作られ、どんな米を使い、どんな製法で仕上げられたのかが、なんだかと気になってくる。しかし知らない人に取ってみれば「この名前。聞いたことあるわ〜」くらいしか善し悪しの判断ができなかったりもする。
「一時期に比べて、若い方や女性にも飲んでいただけるようになってきましたが、みなさん先入観で選ぶ傾向はあると思います。やっぱり銘柄で飲んでしまうんですよ。あとは大吟醸のような特定名称や生酒などの表記に影響されやすい印象です」
こう語るのは、広島県で150年以上の歴史を誇る蔵元、藤井酒造の6代目・藤井義大さん。濃醇な食中酒「龍勢」を筆頭に、15種の銘柄を揃え、「YUMMY SAKE」プロジェクトに参画している。
実はお酒という商品は、“知らないものは選びにくい”ジャンル。とくに専門用語が多岐にわたり情報量が多いのが日本酒で、飲む側にしてみればセレクトが至難の業だし、提供側にとってはアピールが難しい。味覚で日本酒と消費者を紐付ける「YUMMY SAKE」は、商品の魅力をダイレクトに訴求できるスキームというわけだ。
「うちの規模は小さいですし、造りたいお酒のジャンルは狭いんです。味わいはすごくクラシック。だからうちのお酒を飲んでいただける方は限られていて、好きな方はずっと飲んでいただける酒質だと思っています。とはいえそのためには多くの方に飲んでいただく必要がある。それが課題でした」
イチ押しの「龍勢」は12種類のヤミータイプのうち“プリプリ”に属し、フルボディでクッキリとした味の表情を持つ。ブラインドテイスティングで試した筆者の好みにも合い、当然「おいしい」と感じた。反面、不勉強で恐縮だが、その名前を飲むまで知らなかった。
「こういった機会があれば、飲んでもらえて、知っていただけます。同じような酒の中でも、新酒や熟成酒、生酒とか、幅が広いので。僕らが説明しての判断ではなく、皆さんに飲んでもらって表現を広げていただきたいんです」
かといって、味を変えるようなことはしたくないという。
「理由の一番は家業だからです。先祖が長くやってきたことをどれだけこの先残せるかだと思います。日本酒は文化ですし、そのなかで味わいという軸は一番大事で、変えるのではなく極めていくことが僕は大切だと思っています。業界全体はまだまだ保守的です。今回、AIと聞いて正直『なんだそれ?』と思いましたが、僕らも消費者に説明しやすくなりますし、自分たちの味を俯瞰できるいい機会にもなる」
藤井さんをはじめとする蔵元のなかには「今までのやり方だけでは立ちゆかなくなる」という危機感があるらしい。私たち消費者にしてみれば、「おいしいと感じられる保証」をもとに知らないお酒をどんどん試せるし、蔵元にしてみれば好きそうな見込み客に確実に届けることができるという、いわば”Win-Win”な枠組みといえるかもしれない。
双方に価値のある取り組みがさらに広がれば、日本酒の枠組みを飛び越えて、AIによるお酒のマッチングブームが到来するかも? 下戸の人にはちょっと申し訳ないけど、酒好きにとっては間違いなく朗報だ。
エリア: | 東京 / 代官山 |
---|---|
住所: | 〒150-0034 東京都渋谷区代官山町14−11 |
電話番号: | 03-6312-2448 |
営業時間: |
月曜日 17:00〜0:00 火曜日 17:00〜0:00 水曜日 17:00〜0:00 木曜日 17:00〜0:00 金曜日 17:00〜0:00 土曜日 14:00〜0:00 日曜日 14:00〜0:00 祝日 14:00〜0:00 |
定休日: | 年末年始 |
SHARE: