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本能で動き感じる世界と"ひとり"の自分 夏木マリ インタビュー

ネットやSNSで広がる僕たちの世界から、ちょっと距離を置くための「ひとりの時間」について考える対談企画。今回は、夏木マリさん。映画も、音楽も、舞台もマルチに活動の場をもつ夏木さんの考える「自立した人」について。

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夏木マリ流SNSとの付き合い方

Co・ro・na / 私を生きて

自分を知るためにとにかく行動すること。そのためには、SNSやネットの世界は足かせになることもある。ご自身でもInstagramを更新している夏木さん。夏木さん流のSNSとの付き合い方とは?

最近は自分で意見を表明するというより、ネットで色んな意識高い人たちの意見をひたすらリツイートやリポストする人が急に増加傾向にある気がしている。「それをしていないあなたって何も考えていない」みたいな空気が、インターネットの中で生まれていることの、言葉に出来ない違和感。ネット上での炎上や、その逆のものすごい”いいね!”の数など、会ったこともない人たちの言葉に一喜一憂したり、攻撃的になったり、感傷的になったり・・・。そういうのを含め、同調圧力が時代に蔓延している気がするのだ。

「みんななんか人のこと気にしすぎよね。もうちょっと自分中心というか、自分の考え方でいけばいいのに。少数派でも何でも。『私はこれが好きなのよ』って。あの人が嫌いでも、別に関係ない。日本ってね、『あの人が嫌いだとそっちいかないといけないのかしら』っていうような風潮で、人のこと気にしすぎだなぁって思う、凄く」

個人レベルで表現できたり発信できたりする時代になってきているように見えて、逆にその時代が同調しないと孤立しちゃう怖さを増幅させているような矛盾が、複雑に絡み合っている。

「自分を知らないからなの。自分がいないから。自分を知っていれば堂々としていられるはず。『だって私それ好きなの』っていう本能でもいいし、構築されたものでもいいんだけど、自分がないから周りに影響されちゃうの。自分があれば、そんな気にしなくてもいいんじゃないかなって思うんだけどな。ぜんっぜん複雑じゃないと思うの、私。こういう時代になっても。基本的にいつも同じだから、人間の生き方って。生まれてから死ぬまで。私もSNSやってて大変だけど、それはそれで楽しいのよ。楽しい、ってその程度でいいんだよね」

適度な距離感。よく言われる言葉だが、今こそ本当の意味でのそれが必要とされている。夏木さんの言う「楽しいね!」と軽やかに嗜めること。そのためには自分の軸を持っていることが大切だとも感じる。自分を持つこと、自分を知ること。簡単なようでいつまでも難しい課題だ。夏木流アンサーは?

「ちゃんと動くこと、行動することですよ。肌で感じて、肌で失敗して、疲れて、何か得ると。『あ、私ってこういう人なのね』『こういう時はこういう風に対応するのが私なのね』って。『これ好き?』って聞いて、『いや、好きじゃないかも…』『じゃあ変えた方がいいかも』ってさ。自分を作っていくっていうか、自分を知っていく作業。割と知ってるようで知らないから、自分を」

やはり、自分で感じること。その大切さはブレないのだ。

これは合うかな?合わないかな?と自身に問うてみたときにその理由が明確にならないこともあるが、そんなときはどうしたらいいのだろう。

「それは動いてないから。やってみたらいいんですよ。やらないから、パソコン上とか紙面上とかであーだこーだ考えてるから。一歩踏み出した方がいいと思う。私は全然考えないから(笑)。しょっちゅう崖から飛び降りちゃって(笑)。死にゃしないからって感じ? 命があればオーケーって感じ?『あ、またやっちゃったわ~』『これ3ヶ月前に同じ崖から飛び降りたのに』って(笑)。友だちが『あなたこの前もそれやったよね』って(笑)」

なんて勇気の出る言葉!百戦錬磨の夏木さんだってそうなのだから、我々が一発でうまく崖の上から着地できるわけがない。大怪我大歓迎!それくらいの気持ちでいないと。

「歌じゃないけど、ケセラセラみたいな感じで、美味しいもの食べたら悩みなくなっちゃうとか、単純なんですよ。だから皆さん見てると『よく考えてるなぁ』って逆にびっくりしちゃったんだけど。『あなたそんなに考えてるの?でも、考えても前に進んではないからね?』『いいけど、その分動いてみたら? 旅でも出てみたら?』まぁ、こんな感じ。すごくアバウトなのよね。大雑把っていうか」

「いや、しかしね、私ぐらいになると体力がないですから(笑)。今のうちに動いておきなさいって話ね。私も20代の時は凄く失敗してたから。もうヤケクソでキャバレーまでしようと思ってたんだけど、あの時にもうちょっと違う動きをしてたら、今はもっと違う展開になってたと思うのよ」

夏木さんでもそんな風に思うことがあるのですか!?とびっくりしたら、

「みんなが見ているところは成功例しか見てないから、ちょっと格好いい風に見えるけど。下見たら失敗がいっぱいあって、何回崖から落ちて怪我してるかって話なの。だからそういう風に『体力のあるうちに何かやっといたほうがいいですよ』って皆さんには言ってるんですけど(笑)。もうね、60代になったら本当に無理だから。物理的に無理なので、大変ですよもう。だから皆さん、元気なうちにどんどん動いていただいて!ひとりでいるから動けるのよ」

夏木さんの溢れ出るエネルギーやパワーの源は、自分を自分で信頼できる力なのかもしれない。やってみればいい、その先の自分の感覚と変化と復活を信じられる力だ。どう転んでも立ち上がって生きてればその先には美味しいご飯がある、と思える力強さ。自分を知るために動く、何度も繰り返されるその時間こそが真の意味での「ひとり」なのかもしれない。

文:岡野ぴんこ