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ひとりでいるから、ひとりじゃない。

僕たちの自意識はどんどん膨張していく。他者からの、しかも会ったこともない人からの目線を気にしながら生きていかなければならない時代。そんな今だからこそ、「ひとりでいること」が必要だ。夏帆、朝井リョウ、斉藤アリス、夏木マリ、松尾レミ、ヨシダナギ。6人のキーパーソンに聞く「ひとり」の生き方。

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斉藤アリス「30歳になったからこそ、自由な時間は丁寧に過ごしたい。」

ひとりでいるから、ひとりじゃない。

3人目は、モデル・ライターの斉藤アリスさん。あえて周囲の目線を取り入れる、適度な人との関わり方について。

ひとりにはならない

ネットやSNSを煩わしく感じる一方で、そこは「好きなこと」で繋がれる有意義な場所にもなる。モデルの斉藤アリスさんもネットのポジティブな一面を享受している人のひとりだ。彼女は、モデル業の傍らカフェを中心に自分の好きな〝衣・食・住〞に関する情報をブログで発信し続けた。やがて彼女の「好きなモノ・コト」に共感する人たちが増え始め、今ではライターとして弊誌 Harumariを始め「Hanako」、「CREA」などで連載を持ち、「食べログ・グルメ著名人」メンバーの1人となる。Hanakoの読者コミュニティである「ハナコラボ」では所長を務め、いわゆるインフルエンサー達を束ねる存在に。ネットでもリアルでも、一見平和なコミュニティの中にいそうなアリスさんにとっても、「ひとりの時間」は必要だ。

「基本、いつもひとりですからね。事務所に所属しているけど書く仕事がメインだし。例えば、これから10年後にどうなりたいとか、どう仕事を広げていくとか、ということも本当に自分次第。何でもひとりなので、現場に行く以外は家にずっと籠りがちになる。だから、原稿書く時にはカフェにいます。誰かがいる空間のほうが私は集中できる。そこで何かを話すわけではないのですが、自分の身を置く場所って大事だなと思うんです。周囲の目があることで、自分を意識出来る」

他人の目線から逃れられないからこそ、たまには引き籠もって家でひとりだらだらすることもある。でもそれだけでは、何も解決しないことも分かっている。そしてアリスさんは自宅ですらシェアハウスに住み、完全な孤独を排除する。

「以前、ひとりで暮らしてみたんですけど、三か月くらいで『もう無理』ってなって(笑)。私、ずっと高校も寮だったし、実家でも 家族以外の人とも繋がりながら、いろんな人に囲まれて生活してきたので『家に自分しかいない』という状況が耐えられなかったんです。だから上京した時も5人で一軒家借りて暮らし始めました。だからといってみんなずっと一緒にいるわけではなくて、話したい時に話すみたいな感じだから。ひとりの時間は大事にしているけれど、すぐそばに『誰かと過ごす時間』もちゃんとあるんです」

「寂しがり屋」というわけではない。むしろ学校や会社と行った強固な集団にしかコミュニティを持たない人の方が、いざひとりになると‘孤独’を感じるものだ。アリスさんのような立場は、集団に依存することの安心感がない分、適度な距離感のある人たちに囲まれて過ごすことが生活する上でも自分を見つめ直す上でも必要な時間なのだ。

好きなことに正直でいる

「東京で仕事をしていると余計に感じるんですが、この街って、それぞれちゃんと『自分』というものを持って、自立している人たちが集まることが理想型になっていると思うんですね。でも、私自身はいつも自信を持って生きているわけじゃないし、周りの人ももしかしたらそうじゃないかもしれない。その緊張感を感じながら暮らしていくと、もっと自分が成長できる気がするんです」

「自分らしさ」への要求を、呪いではなく、ささやかなプレッシャー程度に感じて生きるために、周囲の目線を取り入れる。アリスさんにとっては「適度な関係」で人との関わりを増やすことが大事なのだという。

「シェアハウスも、友だちでも家族でもない他人と暮らすというのがちょうどいいし、すごく居心地がいいんです。そこまでお互いに踏み込まない関係。カフェにいる時間も店員さんとの関係は同じかな。周囲の目線って大事なんですよ。30歳になって大人になったから、自由な時間こそ丁寧に過ごしたいなっていう思いがあります」

そういう意味ではネットの距離感もアリスさんにとってはちょうどいいのかもしれない。自分の好きなことを発信し、それに共感する人が集まる限りにおいて。

「気をつけているのは『嘘』はつかない、ということです。好きでもないことを記事にしたり、お店を紹介したりはしない。自分が本気でいい!って思ったものとそうでないものは実際、反応にも違いが出てくる」

ネットの情報には「思惑」がつきものだ。アクセスをあげるための嘘や自己承認されたいがための誇張があふれる中で、ユーザーの目も厳しく疑い深くなっている。時には些細な発言が誤解を生んで大きな反響となってしまう。そんな難しい世界の中で情報を発信し続けるためには「好きなことに正直でい続ける」しかないのかもしれない。

「結構大変ですよ。好きなことに正直に生きていくのって(笑)」

 

斉藤アリスの東京カフェホッピング
食べログレビュアーとして数々の名店カフェを紹介している斉藤アリスさんと一緒に「本当にいいカフェ」を考える企画。カフェ天国東京で自分にあった1店を見つけるためのティップスが満載。Harumari TOKYO WEBマガジンで連載中。

撮影協力:J-COOK