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ひとりでいるから、ひとりじゃない。

僕たちの自意識はどんどん膨張していく。他者からの、しかも会ったこともない人からの目線を気にしながら生きていかなければならない時代。そんな今だからこそ、「ひとりでいること」が必要だ。夏帆、朝井リョウ、斉藤アリス、夏木マリ、松尾レミ、ヨシダナギ。6人のキーパーソンに聞く「ひとり」の生き方。

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夏帆「いつもと違う刺激を求めて、街を歩く」

ひとりでいるから、ひとりじゃない。

特集「ひとりでいるから、ひとりじゃない。」インタビュー1人目は、女優・夏帆さん。SNSはやらない彼女の「ひとりの時間」の過ごし方について。

SNSはしない

夏帆さんはSNSをやらない。積極的にやらない、というわけではなく「自分には向いていない」かららしい。彼女は仕事柄、発信したいことが沢山ありそうだけれども、だからこそSNSだけが自己表現の場ではないことを知っている。

「単純に、面倒くさがりというのもあるのですが、自分の素顔が見えすぎてしまうと、作品を観てくださるお客さんの邪魔になってしまう気がして。情報を知ってもらうという意味ではとても便利なツールだと思いますが、上手くSNSと向き合っていく自信がなくて。それでもいつか、やり始めるのかな」

あくまでも本分は女優。夏帆さんは、表現する場もファンと繋がる場も別の形で持っている。時代の要請があるとは言え、SNSを始めるには、別の動機が必要だ。

「私にとっては、インターネットは『探すための場所』なんですよね。だから、気になることがあったらがんがん使いますよ。調べ物をしたり、気に入ったブランドの情報をチェックしたりしてます。そういう目的がある時のためのものなんです。もちろん、だらだらとネットを流し見すれば、思いがけない出会いもあるかも知れないけど、逆に見たくないものまで見てしまうことも。だから(SNSをしないの)かな」

確かに、かつてインターネットは「道具」だった。それがSNSの普及によってコミュニティとなり、コミュニケーションの場という側面を持ち始めた。だからといって「インターネットを使う以上、自己表明は必須だ」というわけではない。あくまで自分のためのもの。その距離感がつかめないまま、SNSに身を投じて、「SNS疲れ」とか「スマホ断捨離!」と煩わしく感じている人も多い。そんなネットの距離感を夏帆さんはどう感じているのか?

「私は、そもそもプライベートの時に沢山の人とワイワイするというより、気の置けない友人たちと気ままに過ごすのが好きなんです。そういう性格でも、SNSとなると、違う自分を出さなきゃいけない空気を感じます。そういう自分らしくないことをしても、続かないってことじゃないですかね」

ひとり時間は「歩く」

「特に、ひとりでいることを意識はしません。ただ仕事と仕事の間に、多少お休みをいただいているので、自分の時間という意味ではしっかり作れている気がします」

2019年3月には主演映画『きばいやんせ!私』が公開。秋にも主演映画の公開が控える彼女だが、多忙の中にも「仕事以外の時間」でリズムを作る。

「ひとりも、人といることも好きなので、家にいるか外で映画を観るか…。あとは歩くのが好きです。ひとりで映画を観る時は目的地まで歩いて行ってみる。いい映画を観た後は帰りも歩きます。なんか『うおおおお』みたいにテンションが上がって、隣の駅まで歩いていっちゃおうかなとか(笑)」

エクササイズのためのウォーキングではなく、自分と向き合うために歩く。夏帆さんのひとり時間は歩くこと。

「家と現場だけの往復になってしまうと自分と向き合う時間が無くなって、その時は良くてもいつか絶対に行き詰まるので、何も考えない時間が欲しいなとは思っています。そういう時かな、外に出て歩くのって」

ここまで聞いていると、夏帆さんは十分「ひとり」を謳歌してそうだ。

「いや、そんなこともないですよ。基本、寂しがり屋だし。特に、上手くいっていない時は、ひとりで良くない方向にどんどん考えてしまって、勝手に『ダメだ、私ひとりだ』って孤独を感じてしまう時があって。でもそれって、どうしようもないじゃないですか。そういう時に人に会うっていうのも一つの手ではありますけど、逆にそういう状態だから人に会っても相手をこっちに引きずり込んじゃう気もして嫌なので、やっぱりひとりで歩くんです。

街の中を歩いているといろんな景色や音が入ってくるけれど、逆にひとりになれる感じがするんですよね。もちろん目的地はあるんですけど。歩いた先に、映画とか展覧会とか、外からいつもと違う刺激を受けに行くっていう目的を含めてひとりの時間なのかなって思います」

ちなみに、夏帆さんは、大のスニーカー好き。歩きやすいというのもあるが、スタイル的にも足元スニーカーが自分らしいとのこと。今日の取材時のスタイリングも、フェミニンなテイストの中にボーイッシュなスニーカーのギャップが効いている、まさに夏帆さんらしいスタイルだった。

たいぶ暖かくなってきた春。お気に入りのスニーカーを履いた夏帆さんが、今日も東京のどこかの街を歩いているかも知れない。

 

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撮影協力:LYURO東京清澄-THE SHARE HOTEL