野菜や果物、肉、魚介類などを、生産者から直接購入でき、仲間と一緒に共同購入もできる新しい流通サービス「食べチョク」が注目されている。単なるオーガニックや自然食といったトレンド消費ではない、‘豊かなつながり’を生むこの仕組みは、未来の食の楽しみ方のヒントかもしれない。運営会社である株式会社ビビッドガーデンのCEO、秋元里奈さんに、理念や上手な利用方法を教わった。
「農薬・化学肥料を極力使用しない栽培方法で作られた野菜などのこだわった生鮮食品を生産者が自由に出店できるオンライン・マルシェが“食べチョク”です」と、まっすぐな瞳で秋元さんは語る。
2017年8月にリリースされ、丸2年がたった。現在、安全や鮮度に関する基準を満たした、約500軒の生産者がサイトに登録している。ユーザーは彼らの生産物を直接購入できるという。
「食べチョク」で取り扱うのは、農薬・化学肥料をできるだけ使用しない栽培方法など独自の基準を満たした生鮮食品だ。野菜をはじめとして、肉や魚、酒類なども取り扱っている。
「大規模農家を増やす施策を政府が着手し始めていますが、小中規模農家に対する支援はまだ足りないと思っています。こだわりの野菜をつくっても、形と大きさで価格設定されてしまうため、農地が狭い小中規模農家は儲かりにくい。現状のシステムを改善し、小中規模農家にも利益が行き届くような仕組みをつくっています」。
「食べチョク」では、より多くの消費者と繋げるために、共同購入システムという特徴的な取り組みを行っている。
「オーダーに応じて、農家さんが指定された人数分に野菜を小分けし、一つの場所に発送するサービスです。野菜はかさ張るため、輸送コストがかかります。少しでもコストを省き、できるだけ安く、利用者の手元に届けたいと思い、導入しました」。
日持ちしにくい食材をわけあえるため、無駄がなく、主にオフィスやマンションで利用されている。メイン利用者は東京都内の30〜50代の女性。美味しい野菜を食べたい人、子どもの食育活動を行いたい人などが多い。
「効率の良さだけでなく、コミュニケーションのきっかけになるのも魅力ですね。美味しい野菜を食べた感動や驚き、オススメの調理方法などを、オーダーした人たちでシェアできるわけです。野菜を食べるのが楽しくなると思いますよ」。
さらに、共同購入にまつわるユニークなアクションも発生している。
「SNSで、一緒に◯◯買いませんか? と共同購入のパートナーを探す人を見かけるようになりました。友だち限定公開のツイッターで、一気に募集する人も多いようです」。
さらに、「食べチョク」では、直接生産者と消費者がやり取りをすることが可能だ。サイトを通じたコミュニケーションは、双方にメリットがあるのだそう。
「生産者はお客さんの目線、ニーズが学べます。売った相手が見えるのでモチベーションにも繋がるようです。ありがとう! のたった一言で相当励みになると聞いています」。
消費者が得るのは安心感やぬくもり。プラス、生産者は人だという当たり前の事実を知る。
「袋にプリントした顔写真では窺えない個性や人柄を知ると、直接的なファンになれるんですね。そのまま定期的にオーダーすれば、お互い笑顔に」。
「食べチョク」のサービス開始直後は、女性のユーザーが中心だったが、企業内マルシェや社員食堂での農家による直販などをプロデュースすることで、男性の利用者も増加。さらに、2019年9月末にはお酒を取り扱う「酒チョク」もリリースしたため、より性別問わず使える便利な存在になりそうだ。
こだわりの生鮮食品を気軽にオーダーできるだけでなく、コミュニケーションのフックにもなる「食べチョク」の共同購入。食べるだけではない、新しい食の愉しみを、オフィスやマンションの隣人を誘って体験してみて欲しい。
取材・文:金井幸男
カメラマン:玉井俊行