マルチに生きることは領域を超えるということ

佐藤健さんや高木琢也さんなど『The 27 club』の対談相手も、桜田通さん自身も、「ひとつの領域を超えてマルチな活動をしている。一方で、「なんでもできるは、なんにもできない」といろんなものに手をつける考え方を否定する意見も少なくない。ゼネラルかスペシャルか。

島崎:

これは愚問になっちゃうんですけど、役者をやっていてご自身で音楽もやられていて、どちらのほうがお好きですか?

桜田:

やっていて楽しいのは100音楽なんですよ。楽しくて仕方なくて。桜田通としてのそのままの姿を出してステージに立てるっていうのは、生きてきた喜びで一番大きいと思っています。

島崎:

ライブとか相当にはじけているし、出し切っている感がありますよね。そのとき、役者というものはどういう位置づけになるのでしょう?

桜田:

僕にとって芝居って「仕事」なんですよ。それは否定的な意味ではなくて、他人の人生を生きるという経験は自分の人生観にもプラスになるし、監督や脚本家の要求に応えるということでも技術とか追求しなければならないことがたくさんある。そういう課題を乗り越えながら信頼を得ていくという意味でしっかり「仕事」として取り組んで成長していきたいという思いもあるんです。

島崎:

なるほど、音楽は自己表現、誰のためでもなく自分のためにやること。芝居は、誰かのためにやること。モチベーションのありかが違うと。

桜田:

もちろん、音楽も芝居もそんなに甘い世界じゃないし、芝居一本でやっているすごい方々はいっぱいいるわけで。そういう人と渡り合うために音楽だけやる人生も考えていたし、芝居の世界で戦う覚悟ってそれくらいなきゃダメなのかな、一本に絞らなきゃダメなのかなって迷っていた時期もあります。

島崎:

でも、自分らしさにこだわれば、やっぱり両方やることがベストなんだと。

桜田:

今はそのバランスがちょうど良いんです。音楽ですごく楽しくて、出し切って空っぽになった自分が、ドラマの現場に飛び込んで色んなものを吸収したりとか。

島崎:

そもそも両方できるということがすごいことだと思いますけどね。

桜田:

今は「両方できているだけ」という言葉が合ってて、それぞれをもっともっと大きくしていくことが今の目標ですね。

島崎:

どちらかというと音楽って0か1じゃないですか。自分で考えたことを出し切れるという。役者さんの場合は、監督とかいろんな人の要求があって。

桜田:

そこから膨らましていく作業ですね。

島崎:

だからこそ楽しめるんでしょうね。

桜田:

そうですね。やっていることがまったく違うんで。

島崎:

それぞれがそれぞれに生かされているんですもんね。

桜田:

そうですね。作品の中で感じた感情を、歌詞にもそのまま書けるんで。普通のアーティストにはない感覚なので、武器にはしていますね。

島崎:

そういう意味で目標にしている方っていますか?

桜田:

近いことをやっている方はいっぱいいますよね。アーティストが芝居やるケースも増えてきていて、みんな何でできるんだろうって思うんですけど(笑)

島崎:

そうなんですよね。専門職ですごいストイックに職人っていう人もいらっしゃるんですけど、どちらかというとマルチな人が増えてきているような。

桜田:

いや、本当にマルチの時代になってると思います。否定する輩も減ったというか、やっていることが素晴らしければ何でもありですよ。ただ、成功している方は武器は一個絶対に持っているんですよね。そういうものは僕はこれからもっと突き詰めなきゃなと思っています。

島崎:

自分の中の強みを見いだすためにもどんどん外の世界に出て行く。

桜田:

それこそ『The 27 Club』の対談で、TAKUYA∞くんが「今、通はファッションが好きで音楽もやってて芝居もやってるけど、あと1個や2個増やしていいよ」って言ってくれて。「俺は今、音楽やってるけど、服も好きだしカメラも好きだし映像も作るし、ドローンの免許も取ったんだ」って言ってて。

島崎:

へえー。

桜田:

そのとき、僕は自分の中でキャパを決め切っていた部分があったなって反省しました。今ここにいるステージが10代でやりたかったことだったから、知らないうち満足感を得ちゃっていて。今、そのやりたいことがあるわけではないけど、でもやったことが手に職をつけなくても、ひらめきのひとつとして広がっていくのであれば、何をやっても自分のためになりますよね。

島崎:

僕たちの読者も世代的には桜田さんに近くて、けっこうフリーランスの人とか多いんですよ。たとえば名刺の肩書でどう語ればいいのか悩んだり、結局私って何をすればいいんだろうと考えている人も多いんですね。

桜田:

そもそもフリーランスって日本っぽい言葉ですよね。本当は仕事をするうえで、会社員かフリーランスかって区別、必要ないんじゃないかと。

島崎:

確かに、属性というか立場でしかない。

桜田:

僕も極論、事務所に所属しているけど心はフリーランスだし、人間、誰しもフリーランスじゃないですか。でもそれをわざわざフリーランスという言葉で自己表明しないといけないのって、個人で活動することに働きにくい、居場所が作りにくいという社会全体の空気がまだあるだけなんですよ。

島崎:

まあ、そうなんですよね。そもそも名刺の肩書きってのも、究極は「肩書きは自分」じゃないですけど、その存在自体がその人の評価や役割を規定すればいいとは思います。

桜田:

もちろん、自分の強みを打ち出すとか、アイデンティティとして使うぶんには良いと思うんです。OCEAN TOKYO の高木さんは、美容師なのにモデルもやってるし、社長だし。彼こそ現代の良い代表だと思っていて。肩書きを複数持ったうえで、それぞれでちゃんと結果を出す人ってすごく魅力的なんですよね。

島崎:

高木さんだったら、アイデンティティとして美容師という肩書きがあったうえで、ほかのの肩書きを持つことで世界は広がる感じはします。会える人も増えていく。

桜田:

僕自身もありがたいことに、音楽業界と、芝居の世界、それぞれの分野で魅力的な方々に会える機会に恵まれていて。嬉しいですけどね、すごく。幸せです。

島崎:

だから一般の方々も、そのように楽しめればいいということですね。

桜田:

だと思います。中途半端に名乗っているとか、そういう負い目なんて感じる必要はないし、満足いくところまでいったら周りの目なんて気にしなくなるから。名刺も本当は名前と連絡先あればいいじゃんってことなんですよね。

島崎:

いろんなお話ありがとうございます。12月7日(本日)で28歳ですね。

桜田:

もう28ですね(笑)。昔は周りは年上ばかりだったのに、最近だと監督が年下とかもありますからね。びっくりします。そういう感覚でやってたから、現場にいる人って全員年上って未だに思っちゃうんですよ。まだ自分が年上になることの気持ち悪さがあるので、厄介ですよ(笑)

島崎:

感覚は未だ10代だと。

桜田:

そうなんですよ、感覚が10代から変わってないんでやばいですよ(笑)。大人にならなきゃって思います。

島崎:

いやいや、きっと素敵な30代になりますよ。これからもご活躍を期待しています。

スタイリスト:柴田 圭
メイク:中村 兼也(Maison de Noche)
写真:岡祐介

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The 27 Club

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