強くまっすぐ生きたいと思う。でも、現代社会ではなかなかそうもいかない。日々の暮らしは、妥協と迎合の連続だ。その現実にふと気づいたときは、型破りな女子高生の迷いなき“コトバの刀”で、自らの襟を正してもらおう。
「最近多くのマンガが映像化されていますが、これも絶対ドラマ化や映画化すると思います! オムニバスで、めちゃくちゃ話も作りやすいですし。なので、これは早めに要チェックです!」(ぴんこ)
今回紹介する『クロエの流儀』は、日本文芸社が発行しているコミックス。ちょっと変わった女子高生・クロエの日常を描く、一話完結型のショートストーリーだ。
「クロエは、日本の高校に通っているフランス人の女の子。金髪で目が青くてとても美人という設定です。でも、なぜかいつも殿様口調なんです。その突拍子もない設定がまた最高」
「クロエは殿様とかサムライ精神をリスペクトしていて、誰よりも日本の文化とか、日本のわびさびとか、謙遜の文化みたいなのが大好きなサムライ女子です。そんなクロエの身の回りに起こるちょっとした出来事とか、失礼な人とのトラブルとかに対して、周囲の意見に流されずにサムライ言葉でバシバシ斬っていくんです」
「で、この“サムライ言葉”がめちゃくちゃ名言ぞろいでして、自分もドキッとしちゃうというか、背筋が伸びちゃうようなセリフばかりなんです。『クロエの流儀 名言』で検索してみるといろいろ出てくるので、それで世界観がつかめるかもしれません」
「たとえば…作中に出てくる『虎の威を借る狐よ 権威の使い方も学んで借りておけ』っていうセリフ。なんか深いんですよね。どういうことだろう? って一瞬なるけど、確かによく考えると的を射てるし、気づかされることも多いんです。設定自体は突飛だからすんなり入れる分、けっこう頭を使わせられる感じ。そのギャップが面白い!」
高校生が主役なのだが、ハイスクール系にありがちなドタバタ感は一切ない。ポイントはそこじゃないのだ。
「ちなみにさっきの『虎の威を借る狐よ…』は、横柄な警察官に言ったセリフです。クロエは誰に対しても忖度なんてありません」
「いわゆる巨悪と闘うためハチャメチャに暴れる破天荒な女の子が、正義を貫き通す…、っていうんじゃなくて、考えさせるような言葉でやっつけるのが、すごく新しくて現代的ですよね。そこがとっても好きなんです。あくまでクロエはいつも冷静で客観的なんです」
このマンガに出てくる人物に、明らかな悪人はいない。それがリアリティを生んでいる。
「世の中にはクロエの言葉を“痛快”って表現する人もいますが、わたし的にはなんだか自分に言われているような気がして、ドキッとするんです。そう思う人、たぶんいっぱいいるはず」
クロエのサムライ言葉で斬られたのは、実は読者だったりもするのだ。
「普段の生活のなかで、なんとなく正しくないなと思いながらも流されてしまっていることや、毎日を過ごすために折り合いをつけていること…。そんなマジョリティの思考に対して、鋭く指摘してくれるんです。どこに名言が隠れているかわからないから、ちょっとしたセリフも読み飛ばせません!」
「現実には、クロエのようにまっすぐ生きていける人はほとんどいません。でもみんな悪気があるわけじゃないから、クロエにズバッと言われると、ちょっと気を付けよう、ってなるんです。で、自分を変えた人を、クロエは『それはいいと思うぞ!』とほめてくれます。正しいことを突きつけてくれながらも人間は完璧じゃなく、そこを目指すこと自体に意味があると言ってくれるんです。そこがまたいいんですよ! これを読んだ後は、ちゃんと生きなくちゃ! ってなります」
核心を突くクロエのセリフは、現代人なら誰でもチクリと刺さるはず。
「30代で仕事のポジションもいい感じになってきて部下がいるような人にもいいかもしれません。特に男性かな。ひとつのエピソードは、だいたい3駅移動している間に読めます。ちゃんと一話ごとに終わるからテンポよく読めますよ。そして最初にも言いましたが、きっとドラマ化されると思いますので、今のうちに押さえておきましょう!」
すでに話題作なのだが、もっと話題になる前に、ぜひご一読を。
取材・文:中山秀明
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