苦境の飲食業界にあっても精力的に活動しているsioチームがこの秋、新しいお店をオープンした。最大の武器である “味”以外にもこだわり抜いた、青山の新アドレス。レストランといえばディナーという固定概念を覆し、朝・昼・夜いつ行ってもスペシャルな体験が待っている。
北青山の、高層マンションを中心とした「ののあおやま」。旧「都営北青山アパート」跡地の広大な敷地は、再開発で施工された地区だけあり、すべてがとにかく綺麗で心地よい。低層階にあたる商業エリアにはよりすぐりのショップやレストランが入居する。
sioチームの新店舗「Hotel’s」があるのはこの「ののあおやま」の一角だ。
代々木上原「sio」のミシュランスター獲得や、精力的なメディア露出により、全国的な知名度の鳥羽シェフ。彼が新しいレストランを出したとあれば、全国のフーディたちがこぞって来店するだろう。
だが、この新しい挑戦の店はそんなフーディたち「以外」にも心地よいレストラン体験をしてほしいとの思いから生まれたプロジェクトなのだ。
確かに、レストランへ行くということは限られた層の限られた人間の趣味であり、日常的に行くにはハードルが高い。予約をしなければいけないし、シェフがいるのはだいたいディナーだし、そもそも高い。何万もかかる。
食事がおいしい、シェフの技術がすごい、食材にこだわっている……。レストランの素晴らしさはそんな部分で表現されがちで、でもそれを味わうのは一部の人のみになってしまっている。
「Hotel’s」は、もっとたくさんの人に楽しんでもらえるよう、朝・昼・夜と三部営業してすべての時間でのスペシャルを提供することにしたのだという。
提供される食事はどの時間帯であってもsioチームの素晴らしいクオリティのもの。「シェフしか作れない」というレストラン業界の常識を壊し、シェフと同等の調理ができるチームをつくりあげた。鳥羽さん本人がいなくても同じクオリティの料理を作れるチームだからこそ、どの時間帯も自慢の一皿が出せるのだ。こればかりは食べてもらう以外ないのでぜひ青山で試してほしい。
また、Hotel’s最大の特徴は料理の味以外の小さな“心地よい”にこだわり抜いている点だ。
たとえば、おしぼり。
ぶ厚くリッチなイケウチ・オーガニック の今治タオルを使い、気兼ねなく手をふける。ガシガシ使っても、申し訳なく思わない。
料理が乗る器にもこだわった。高級レストランにありがちな、ちょこんと肉が乗る大きな皿……。冷静に考えてみれば「皿、大っき!」とツッこんでしまいそうなのに、それをさせない圧がレストランにはある。
鳥羽シェフはそこをきちんとツッこんで適正なサイズの皿を作家と一緒に制作したのだという。確かに、家にあったとしても使い勝手が良さそうなサイズだ。食後のコーヒーカップを持ち上げるときにその軽さに驚くだろう。
客が数時間腰かける椅子は、すべて「マルニ木工」製。柔らかな曲線が美しく、座り心地も抜群。長時間座っても、お尻が痛くならない。
音楽やトイレの香り、スタッフのユニフォームも、すべてこだわり抜いた。
とにかく、鳥羽シェフが考える「本当にして欲しいレストラン体験」の細かいディテールにこだわりまくっているのが「Hotel’s」なのだ。
「お客様の目に触れるすべてがスペシャルであるべきだし、お客様の受ける、食事を含むすべてのサービスがスペシャルである、そんなお店」と鳥羽シェフ。
シェフが「こうしたい」ではなく、客に「こう過ごしてほしい」が圧倒的に優先される。それはささやかなことだが、その積み重ねは私たちにとって「心地よい」へと変化するのだ。
周りを気にせず会話が愉しめる半個室、柔らかい木目が嬉しいテーブル席、そして調理をダイナミックに眺められる天覧席のカウンター。どこを選んでもそれぞれでの数時間は、きっと特別なものになるだろう。
どの時間帯でもスペシャルな体験が待っているが、ビオトープで子どもが遊ぶ声が漏れ聞こえてくる、昼間の時間帯を特におすすめしたい。いい感じに入ってくる柔らかい光と喧騒が相まって、レストラン体験を新しく感じさせてくれるだろう。
「Hotel’s(ホテルズ)」
住所:東京都港区北青山3丁目4-3 ののあおやま2階
TEL:03-6804-5699
営業時間:8:00~22:00予約URL:
https://www.tablecheck.com/shops/hotels/reservecheck.com/shops/hotels/reserve公式Instagram: https://www.instagram.com/hotels_kitaaoyama/
RECOMMENDER:
稲垣 美緒
Harumari TOKYO編集部