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僕らのカフェ学

東京はカフェ天国。「美味しい」以外にもたくさん素敵なカフェがあり、たくさんの人たちの知られざる情熱がそこにはある。そんなカフェをつくっている人たちから「カフェを構成する要素」の楽しみ方を学んで、マイフェイバリットカフェを探そう。

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僕らのカフェ学 空間編 / Puddle流 加藤匡毅さんに聞く「人を中心に据えた」カフェデザイン①

% ARABICA Kyoto Higashiyama

国内外で数々のカフェを始めとした「居心地の良い空間」の設計デザインを手がけている建築事務所「Puddle」。代表の加藤匡毅さんの「場所・人・街」への想いからカフェ空間の秘密を学ぼう。

設計建築・空間インテリアを含めて「居心地が良い空間」を作ることにかけてはここ数年でトップを走り続けている建築事務所のひとつ、Puddle。「good design cafe」編集部の取材でも話題に上がった注目すべきチームだ。

カフェに限らず国内外で様々な案件の設計デザインを手がけているPuddleだが、代表作である京都のカフェ「% ARABICA」を例にその「居心地の良さの作り方」の秘密を代表・加藤匡毅さんに聞いた。

Puddleは奥渋谷のど真ん中が拠点。坂道の一角にある「緑豊か」に仕立てあげられた自社ビルはもちろん彼ら自身の作品。1F部分がPuddleの事務所となっている。

事務所を入ってすぐ、「後ろ向き」のカフェカウンターが設置されている。

一般的にカフェはお客様と対面できるようにカウンターが設置されているもの。なぜ裏返し?

「カウンターの内部って普通あまり綺麗じゃないですよね?そこをきちんと意識できるようにあえて裏返しに作りました。ここは来客も多いので、その意識がないとダメだと思うんです。もちろん、ディスプレイとしてではなく、コーヒーを飲むために普通に使っていますよ(笑)」

カフェのスタッフの意識の置きどころを意識しているようだ。

男女や国籍を問わないスタッフが在籍するのも、国内外から様々なクライアントが多い彼らのスタンスを物語っている。

「どう暮らすか」に寄り添うインテリアの考え方

日本を代表する建築家・隈研吾さんの事務所で建築を3年学んだ後、インテリア会社IDÉEに5年いた加藤さん。建築畑で「建物をどう捉えるか」ということから「暮らしを考える」へ徐々に領域がシフトしていったという。特にIDÉE時代は異業種のプロが多かった。「家具をずっと考えている人。音楽を徹底的にやっている人。植物に向きあっている人。やっていることはバラバラなんですが、『こういうライフスタイルがいいよね』という共通認識があったので、その考え方はかなり身につきましたね。生活をするために空間が存在する。建物そのものというよりは、もっとリアルに『人』に寄りました。ただバックボーンが建築なので、どう美しく見せるかとかそういうところはベースにあります」

いろんな得意領域がありつつ、いろんな価値観がありながらPuddleも共通認識で皆が繋がっている。

基本的にはクライアントワークが主になっている。

2014年に設計した京都の「% ARABICA Kyoto」はPuddleが設計したカフェとして外せない存在だ。時代は2013年頃から始まったサードウェーブコーヒーブームの真っ只中。当時はまるでアメリカにいるようなインダストリアルなデザインのカフェが日本では話題になっていた。

海外では「コーヒーショップの有り様」が提案され、「空間」が「体験」にシフトしていった。「どうしてこの場所で、この佇まいなのか?」を繰り返し海外のカフェやホテル、飲食店などを視察する中で加藤さんはそのロジックの理解を深めていった。

その土地に馴染みのあるものが強度を支える

IDÉE時代からのクライアントであったアラビカのオーナーとは「京都からディテールまで世界に発信できる店をつくりたい」と1年くらい時間をかけて世界中の様々な土地を一緒に回った。その中で共に得た共通認識は、「地域に根ざした強度のあるもの」。日本にある素材・馴染みある素材で、でも「ザ・日本」「いかにも和」じゃない表現をしたい。

「例えば、レンガとかレザーとか、素材のもつ個性は良いけれど、元来日本に普通にあるもの・馴染みがあるもの、ではないですよね?」

日本人としてのルーツを考え抜いて、必然的にその土地で手に入るものはその土地に馴染む。違和感がない。

「伝統的な日本家屋の建築としては『床と屋根で支え、あとは襖などで仕切る』という考え方がベースになっているんですが、アラビカも考え方はそれを踏襲しています。そうすることによって、「中部と表の通りがつながるんじゃないか」という仮設のもと、透明なガラスを使ったりしていますね。近代的な素材を使いつつ、左官屋さんの手仕事のような温かみのある伝統的な手法も取り入れています」

だからこそ、日本人にとって「モダン」なのに、「居心地の良い」空間なのだ。

店の骨組みの次は?

「どうやってカフェを機能させていくか」を後編で紐解こう。