logo

僕らのカフェ学

東京はカフェ天国。「美味しい」以外にもたくさん素敵なカフェがあり、たくさんの人たちの知られざる情熱がそこにはある。そんなカフェをつくっている人たちから「カフェを構成する要素」の楽しみ方を学んで、マイフェイバリットカフェを探そう。

4

空間編 / Puddle流 加藤匡毅さんに聞く「人を中心に据えた」カフェデザイン②

ダンデライオン・チョコレート ファクトリー&カフェ蔵前【閉店】GRAIN BREAD and BREWANOTHER 8 (アナザーエイト)

「Puddle」のつくるカフェの居心地の良さはなぜ?代表の加藤さんの「場所・人・街」への想いから紐解く、カフェ空間の作り方。

「裏方」を中心に据えることで珈琲一杯以上の価値を

前編では店の骨格について触れてきたが、骨組みの後は、店の機能のつくりだ。アラビカの嵐山店はロケーションも含め大人気の店舗だが、

「店の人が一番いい景色を見れるようにあえてしている」そう。

「店は何十年も続いていくものであってほしい。だからこそ、カフェで働く人、すなわちバリスタさんはその場所を作りあげる重要なファクトだと思うんです。その人たちが最高の景色で働いて、一杯の珈琲を淹れていくことが継続的にできたら、その珈琲はただの珈琲以上に価値がある」

実は海外では「働く人」を中心に置くデザインスタイルはあったそうだが、日本にはまだまだなかった。でもそれは住宅で「キッチン」を中心に考えるというのと同じく、加藤さんにとっては自然な考え方。

「その場所に長く居る人を中心に据えて設計するので、住宅であれば奥さんが中心。だからキッチンのあり方から決めます。キッチンからコミュニケーションが取れるような空間を作るので、カフェだからというよりは、ライフスタイルやどうコミュニケーションをとる空間なのかと一緒ですね。本質的なものは裏側に隠れがちだが、それを表にしていきたい」

なるほど、事務所にあるコーヒーカウンターも、「裏側を表に」している。

同じブランドでも違う顔を見せるのは場所が違うから

2015年の「PARASOPHIA京都国際芸術祭」。会場となった京都市美術館の片隅にPOPUPのアラビカコーヒーを作ったことがある。

「現代アートのイベントだったので、これ自体もアートの文脈に見えるものをと思って考えました。実は、アメリカから取り寄せた温室キットなんですよ。これをコーヒーキオスクに改造しました。すぐバラせるし、軽トラで移動できる。あとはどこでも入手できるコンクリートブロックを頼むだけです。どこにでも持っていけます。この展示期間中に、藤井大丸さんにお声かけ頂きました。」

これが移設そして再設計されて現在は京都市内・藤井大丸の百貨店の店内にある。

百貨店ながら、このエリア自体を街として捉えた。通路を歩いている人と中にいるいる人が知り合いで、「久しぶり〜!」なんて目線が合うような街の風景を再現したいそう。

「だいぶICONICなものなので、寸法とかがハマったのは本当に、奇跡でしたね。ただ一回見たら忘れないだろうし、嵐山や東山のアラビカとはまた違うアラビカの顔が見せられたかなと思います。同じブランドの出店展開でも、金太郎飴じゃないものを作れたらいいですよね。立地によって、どういう風景をつくるかということに真剣に向き合ったら全部違うアウトプットになってくる」

機能に特化していくことでミニマルなデザインへ

それでは2018年現在の今、意識していることなどはあるだろうか?

「やりすぎないこと。あまりデザインがでしゃばりすぎないようにします。

今年の春にやったベルリンのプロジェクトで言うと、ベルリンはやはり「やりすぎるのがダサい」という街全体の意志を強く感じました。ブランドの持つ力をシンプルでミニマルなデザインにして、その後何十年と店が生きて行くのがやはりベストかなと。なので、どうしたら街の機能の一部になっていくといけるかと考え抜いて、やりやすいようにデザインしてあげるのが僕らデザイナーの仕事と考えています。」

トレンドというよりは、本質的な目的追求をし始めると、ミニマルなデザインに向かっていくのは自然な流れなようだ。

居心地が良いための最終確認

加藤さんが飲食店の設計を依頼された時に最後気にするのはやはり「居心地の良さ」。

「どれだけロジカルでいいものを作っても、結局居心地が良くなかったら意味がない」

なので、着席の業態の場合はレイアウトを一度決めたら「自分だったらここは選ばないだろう、案内されたら嫌だなと思う席」を選ぶ。

そこを「嫌じゃない席」に昇華させるためのボーナスポイントを加えていくのだ。スペース・家具・席幅・景色・音・匂い・・・。

納得いくまでそれを繰り返すことによって、「どの席に座っても居心地が良い」店を作っていく。

 

Puddleが手がけた東京のストアデザイン

最後に、東京でPuddleが手がけたカフェを紹介する。http://puddle.co.jp/projects

何十年後も、その場所にあることが想像出来る店なのだ。ぜひ、加藤さんの語る哲学を実感してほしい。

▼ダンデライオンチョコレート ファクトリー&カフェ蔵前

bean to barを体現するカフェ併設のチョコレートファクトリー。

コンセプトにもなっているチョコレートの加工過程がパフォーマンスとして眺められるつくりになっている。また、近隣住民の公園の目の前であることから、その見えがかりも見どころ。

▼GRAIN BREAD and BREW

店舗に面した氷川神社の参道を意識した階段の作りは街に溶け込ませている。奥の客席の目線の高さが意識されているのは、「体験のシェア」。

▼ANOTHER8

目黒・権之助坂の路地裏にあるクラフトビアバー。元々はガレージだったので、その開放感をそのままに、最大限間口を広く取り、やはりここも主役であるビアサーバー・働くスタッフが美しく見える設計になっている。