朝井リョウさんの最新作『死にがいを求めて生きているの』は「平成の対立」がテーマ。一見、対立がなさそうなこの時代に、朝井さんは僕らの心の中にある“見えない対立”にその答えを見い出した。
自分らしさとは、自分が好きなものや幸福に感じることを自分の内面に問いただして、最終的に自己肯定することで確立していくものだと思う。他人との比較の中に求めているうちは、いつまでたっても自分らしさにたどり着けない。でも、自分のことを理解しようとするときに、まずは、他人との比較から始めざるを得ないという矛盾。そこが自分探しという迷宮の入り口だ。多くの人が一度は経験しているかもしれないこの状況について、朝井さんは作品の中で「平成の対立」として可視化した。
「プロットを書いていた2014年ごろは、いざ平成を舞台にして対立をテーマに書くとして、本当に何も思いつかなかったんです。むしろ、対立や競争の中でのし上がっていくというよりは、『みんながオンリーワンであることが素晴らしい』という考え方に心当たりがありました。個人的には『個性を大事に』とか『人と比べるのではなく、個性を伸ばそう』と言われてきた実感があります。でも、『オンリーワンでいい』と言われた先、『じゃあ、どうすればいいのか?』と迷子になったり、『オンリーワン地獄』に嵌まっていったりする。『競争しなくていいんだよ』、『人と比べなくていいんだよ』『自分のものさしで』と言われてきた実感があるけれども、そもそも人間は他人と比べないと自分のことを理解できないし、ものさしはそれ単体で存在することはできません」
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