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特集:ひとりでいるから、ひとりじゃない。

僕たちの自意識はどんどん膨張していく。他者からの、しかも会ったこともない人からの目線を気にしながら生きていかなければならない時代。そんな今だからこそ、「ひとりでいること」が必要だ。夏帆、朝井リョウ、斉藤アリス、夏木マリ、松尾レミ、ヨシダナギ。6人のキーパーソンに聞く「ひとり」の生き方。

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松尾レミ「自分の背中を自分で押したいために書く言葉もある。」

ひとりでいるから、ひとりじゃない。

5人目はGLIM SPANKYのボーカル&ギター・松尾レミさん。音楽業界の中でも、ひとりの女性としても違いを出しつづけている彼女が大切にしている「人と話すこと」について。

自分の方が正しいなんて思わない

なにかと「自分らしさ」を要求される時代。でも、実際やりたいことを好きなように発言したり行動に起こしたりすると、今度はそれを否定されたり、逆に「同じこと」、「同じ考え」を求められ、その同調圧力の中で孤独を感じたり不安になったりする。やっかいな 世界になってきたように思う。

GLIM SPANKY(グリムスパンキー)は男女二人組の音楽ユニット。最近のR&BEDM主流の音楽シーンとは一線を画したロック&ブルースのストイックな表現。一方で、数々の映画やテレビドラマに楽曲を提供し、メジャー感も備える。何よりも、小さな子どもから中高年の音楽好きまで幅広い層の熱いファンがいて、佐野元春、松任谷由実、野宮真貴など日本の音楽界のレジェンドたちに愛され、また業界を超えて文化人や俳優などからも支持を集める希有な存在だ。

彼らは、「人との違い」を出すだけでなく、いわゆる音楽業界の中でも違いを出し続けている。そのほとんどの作詞・作曲を手がけるボーカル&ギターの松尾レミさん。たぐいまれな才能と声の持ち主の彼女は、自己表現について迷ったことはないと言い切る。

「だから、『変わり者』だと言われます()。もちろん(世間との)ギャップは感じますよ。分かりますよ、人間ですから。実際、私の地元がすごくで、かなり浮いていました。でも、特殊な家庭で親から『人と同じことをするな!』って育てられたんですね。だからギャップがあることに昔から免疫があって、むしろ自分と周りとは違いがあって当然、と思っていました」

ミュージシャンといえば「唯我独尊」、ましてロックとなれば反体制、反社会というイメージがつきものだ。しかし彼女は意外にもそういう思想は持っていない。

「世間と比較して、自分の方が正しいなんて思ったことは一度もないです。他の誰かを否定したり、批判したりするつもりもない。でも、逆に、すごい勢いで言ってくるんですよね。高校生のとき、バンドをやるとか美大に行くとか言うと、『ありえない!』とわざわざ直接言ってくる人もいました。そういう考え方に、なんていうか『幼い』って思ったんですよ。大人でもそういうこと言うなんて」

話をしよう

相手を否定することで自分の立場を保持しようとする、いわゆるポジショントーク。彼女の場合、そうした批判に対して「じゃあ、その違いをもっと見せていこう」という発想になり、作品の中で自分を肯定し続けてきた。とはいえ、誰もが彼女ほどに強くなれるわけでもない。彼女の周りにも、やりたいこと、好きなことに一歩踏み出せないでいる友達が沢山いる。そんな時はとにかく「話をする」のだという。

「思っているだけではなく、言葉にすることで自分が本当にやりたいかどうかも含めて気づくこともある。とにかく沢山話をして、話が出来る相手を見つけて、どんどん言葉にしていくしかないんじゃないかと思います」

悩むのではなく考える。考えたものを言葉にする。その言葉を相手にぶつけて確かめる。シンプルだが、それで前に進むことが出来る。

「私が歌詞に書いていることは、みんなに伝えたいことでもあるですが、自分の背中を自分で押したいがために書く言葉も沢山あるんです。例えば、ライブ中ってすごく不安になるんですよ。コンディションもお客さんの反応も日によって違う。そういう時に自分の歌を歌った瞬間に、自分の歌詞を自分で言葉にして自分の背中を押して心を立て直すときがあるんです」

その言葉を受けとめてくれる相手は、インターネット上でも簡単に見つかる。ただ彼女はネットの繋がりには少し距離を置く。

「やっぱり、リアルの繋がりの方が大事だと思いますよ。ネットの言葉は、嬉しいときも、批判されてイラッとするときもある。そういう意味ではリアルの会話と一緒なんですが、でも、私はその人のことを何も知らないし、その人も私のことを深く知らない。そういう関係で交わされる言葉はやっぱり信じ切れないと思うんです。そこは冷静になった方がいい」

そして究極は「自分の言葉を信じ切れるかどうか」なのだ。他人からの評価や指摘ではなく、自分が発した言葉を自分で肯定出来るか。その自己肯定に満足出来たときが「自分らしさ」の始まりなのではないだろうか。

「私は今の自分に満足しているわけではないです。それでも、今までずっと『私はこれだ』という自己肯定をして生きてきたことを幸せに思うし、だからこそ理解してくれる人も増えてきている。そうやって自分の言葉を信じ続けることが、自分の中にしっかり根付い ているから、これからも自分の生き方を作品にしていけるんだなと、今日、話をして思いました。やっぱり話をするって大事ですね()

 

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撮影協力:物豆奇