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ヨシダナギ流 積極的他力本願のススメ

フリーペーパー特集「ひとりでいるから、ひとりじゃない。」のスピンオフ企画。誌面では語りきれなかったヨシダナギさんと小誌編集長・島崎昭光との対談をフルバージョンでお届けします。

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フリーランスで生きていくために必要なこと

ヨシダナギの拾われる力ヨシダナギ展 – THE AMAZING WORLD OF NAGI YOSHIDA –ひとりでいるから、ひとりじゃない。

ヨシダナギさんは、今でこそフォトグラファーだが、20代はグラビアアイドル、イラストレーターと仕事を様々に変えてきた。その間ずっとフリーランスで仕事をしてきた彼女にとって「うまくいく」ための秘訣を聞いてみた。

島崎:著作の『ヨシダナギの拾われる力』の話に戻りますが、ナギさんは色んなことに手を出していて、あまり高い目標設定をせず、達成感の沸点が低くて、どんどん新しいことをやられていますよね。今は何か手を出しているものってあります?

ヨシダ:今は、まだ手は出してないんですけど、家具職人になりたいんですよ。

島崎:それは何がきっかけだったんですか?

ヨシダ:きっかけは、事務所を今の場所に移転する時に、家具を一式揃えようと思って探していたんですけど、あともう一歩のところがなんか好みじゃないんですよ。海外だとあるんですけど、日本には輸出できませんっていうブランドばかりで。「何で日本だと無いんだろう。あれ、自分で作ったほうが早いんじゃない?」って。

島崎:たぶんナギさんは半年後くらいにはやってるんでしょうね。

ヨシダ:それが、やらずにもう半年過ぎてしまって…。

島崎:そうなんですね(笑)。今度は誰に拾ってもらいましょう。

ヨシダ:家具屋さんに弟子入りするか…。あと調べたんですけど、作る人と設計する人とで分かれるらしくて、手を動かすのと口で言うのとどちらがやりたいんだろうなって考えた時に、私は口で言う方だなと(笑)。

島崎:イメージを作る方だと。

ヨシダ:だから今は「家具作れるよ」って言ってる人と出会うのを待ってます(笑)。

島崎:でもそれって、ナギさんのSNSアカウントでやりたい人を募集したら集まってきそうじゃないですか。

ヨシダ:決して自分からは言わないんですよ。こういうメディアで、呼び水だけ差しておくっていう(笑)。自分から言うと「お前がやりたいって言ったじゃん」って後から言われるのが嫌だから(笑)。

島崎:なるほど。例えば、今は、ネット上で自分のコミュニティやサロンが作れるじゃないですか。自分でインターネットから狼煙を上げるとファンの人たちが集まってきて、自分のやりたいことが大きくなっていくという流れ。

ヨシダ:ありますね。

島崎:「時代はそういうのが主流だぜ」って言ってる人もいるくらいで。でも僕は、それに若干違和感を持っているんです。その時の責任の所在というか。もちろん腹をくくってやってる人もいるとは思うんですが、インターネットってイージーに「やりたい宣言」できちゃうから、覚悟の無い人が上に立っちゃってトラブルが起こったりもするなと。でもナギさんは、そこまでインターネットに踏み込まないんですね。

ヨシダ:私はそんなに、やりたい事を大きくしたくないんですよね。大きくすると責任を取らなきゃいけなくなってくるので、その責任を拭ってくれる人が入ってきてくれるならいいですけど。無駄な人を巻き込まず、本当に責任感のある人だけで回せるプロジェクトが一番穏やかな気がするかな。

島崎:多くの人の支持を集めようとすると、必要以上の責任を背負うことになって、雁字搦めになることありますね。

ヨシダ:クラウドファンディングとかは、私には向いていない。

島崎:それこそ芸術活動って、パトロンとか盲目的に支援してくれる人が一定数いるじゃないですか。確かにクラウドファンディングって、ビジネスをするにはいいですけど、アート活動したい人が「お金出してくれたら、ああします、こうします」って、けっこう縛られて結局やりたい作品が作れなくなるってこともあるのかも知れません。

ヨシダ:その手の責任を抱えながら生きる日々ほど、私にとって苦しいものは無いですね。無責任に生きていたいんですよ、誰にも迷惑をかけない状態で。

島崎:あぁ、だから「拾われる」なんですね。ナギさんのいう無責任のスタンスでもその発想ならコトを起こすことができるかもしれない。それが「拾われるか、拾われないか」という領域だということですかね。もの凄くやりたいけど、責任を取ってまでやりたくないというレベルのところだったら、拾ってもらったらありがたいですよね。

ヨシダ:そもそも私、何かをしたいっていうのが無いんですよ。何もしなくていい。何もしないでそのまま日々が淡々と過ぎて、そのままおばあちゃんになれたらな、くらいなんで、熱量が無いです。何かしないとっていう焦りが無い。

島崎:とはいえ行動を起こしてるじゃないですか。直感的にやりたいと思ったことを。

ヨシダ:体力が有り余ってるんですよ(笑)。

島崎:最後にお聞きしたいのは、フリーランスで働くことについて。今、増えてきてますよね。僕の身の回りだと、中には「大丈夫かな? やっていけるのかな?」って思うフリーランスの人もいるのですが、ナギさん自身もフリーランスで20代を過ごされて、どうやったら上手くやっていけますかね?フリーランスの人からすると、ナギさんって凄く成功した方だと思うので。フリーランスであるからこそ、得られるものを得てきたって感じがするんですが。

ヨシダ:私は14歳から大人の世界に放り込まれました。私がフリーランスを選んでいるのは、基本的に縛られたくないからという理由でしかないんです。でもそのデメリットとして、保証される収入は無い。そこだけ自分の中で覚悟できてれば、こんなに楽なものはないです。いつでも仕事を変えられるし、いつでも旅行に行けるし。ただ、悲壮感のある人には仕事をあげたいとは思わないと思うんですね。だから、私がフリーランスで生きていく上で気をつけたのは、まずネガティブなことを人前で吐かないということと、「この人だ」と思ったクライアントにはとにかくニコニコしておくっていうのと、あとメールの文章はしっかり書きました。頭が良い悪いではなく、挨拶が出来ない人はちょっと私は苦手だなと思っていて。なので、メールの文章はしっかり書く。そうじゃない人とは仕事をしない。

島崎:それは、ビジネスマナー的なところから、文章の中身も含めて?

ヨシダ:ビジネスマナーというか、そもそも人間性のことだと思っていて。

島崎:たとえば酷いメールとかって何ですか?

ヨシダ:半年とか1年ぶりくらいに連絡が来たんですけど、「お疲れさまです」「お久しぶりです」「お世話になります」が無く、用件だけ書いてあるんですよ。で、「よろしく!」って。

島崎:それは良くないですね(笑)。

ヨシダ:小学生の時から文通を趣味でやっていて、私は募集する側だったんですけど、その中でプリクラや写真が入っていて、なんか人って可愛い子を選びたくなるんですよ。でもお母さんが、もちろん手紙の内容も大事だけど「顔とかじゃなくて字が綺麗な人を選びなさい」と。「字が綺麗な人は心が綺麗な人が多いから」って言われて。それから手紙のやり取りをしていると、本当に字が綺麗な子って、私が送った手紙に対して丁寧に返事をくれるんですよ。一つもトピックの漏れがなかったりする。でも、プリクラとかは可愛いけど字が綺麗じゃない子って、自分の話ばかりなんですよ。そういう傾向があるのを見てて、やっぱり文章が書ける人は「人間的に頭の良い人なんだな、心が綺麗な人なんだな」っていう先入観があったので、仕事になっても、メールで挨拶ができない人とか距離感ゼロで来る人とか、ちょっと苦手だなって思っちゃいます。

島崎:確かに、文章で人の内面が分かりますよね。ボールペン字講座の先生が言っていたんですけど、字が上手い人って、「トメ」と「ハネ」が上手いんですって。でも下手な人は、トメがトメられないですよ(笑)。

一同:(笑)。

島崎:ハネも、ハネられないんですよ。

ヨシダ:ハネたくてもハネられない(笑)。

島崎:確かに「トメ」「ハネ」って、日本語を書く基本だし、そこが一番面倒くさいんですよね。さらっと書きたいところを、グッと堪えてトメることができるって、心の持ち様なんです。焦っていたりイライラしていたりすると、トメハネが雑になる。確かに字が上手い人って、綺麗って言うより丁寧に書いてるんですよ。それができる精神状況とか人間性と、そうじゃない人っていう分別もあるかもしれませんね。

ヨシダ:そのネタ、いただきました(笑)。

島崎:さて、ナギさんはトータルでみて、ご自身にあまり期待していないというか、やりたい事の明確なゴールは無いということなんですが、人生に山あり谷ありみたいなのがあるとすると、自分はどの位置にいるとか考えることありますか?

ヨシダ:無い。フフフ(笑)。

島崎:30になったらこうしたいとか、40になったらこうなっていたいとか…。

ヨシダ:あぁ~、無いですね。どうなっててもいいですもん(笑)。無責任なんですよ。どうなってでも生きられると思ってるんです。

島崎:さすがです。今日はお時間ありがとうございました。
<終>