logo

東京・夜こそ行きたいカフェ事情

飲みに行った帰りや時間つぶしでなく、敢えて、夜こそ、「カフェに行く」予定を入れたい。そんな魅力的なお店が東京に増殖中。さぁ、夜カフェしに、わざわざ、出かけましょう。

7

カフェなのに看板メニューはレモンサワー。こだわりづくしのモノづくりに迫る

RUTTEN_(ルッテン_ )

台東区、御徒町。宝石やメガネ、カメラをはじめとする職人も多く、古くからの問屋も多いものづくりの街として有名だ。
職人の町ながら、老若男女に開かれたカフェ、それが今回訪れた「RUTTEN_」。

 

JRと地下鉄、どちらからもアクセスが良く、昭和通りという大きな通り沿いなのも安心感あり。温かみのある照明に誘われるようにお店の扉を開けてみた。

両サイドに長机のカウンターのみというシンプルな店内。見渡すとショーケースに飾られた眼鏡に気づく。カフェなのに眼鏡?

カフェの正体は眼鏡づくりのプロ(!)

実はこのカフェを営むのは青山でファッション関係者から熱い支持を集めるアイウェア専門店「ブリンク外苑前」と「ブリンク ベース」を運営する有限会社荒岡眼鏡。本社を御徒町に構え、創業から約80年。

「このまま表参道(港区)でやっていていいのかな?と兄と話していたんです。自分たちのルーツである台東区を活性化させたい、恩返しをしたいという気持ちからRUTTEN_をオープンさせました」と語ってくれたのはオーナーの荒岡敬さん。

ではなぜ眼鏡屋ではなくカフェを?「眼鏡屋は用がないと足を運ばないじゃないですか。もっといろんな人に来てもらって、敷居低く楽しんでもらう場所、それがカフェという選択でした」(荒岡さん)
よし!それならばまずはコーヒーを…と壁に掲示してあるメニューを見ると…

レ、レモンサワー?!そう。RUTTEN_のおすすめは何を隠そうこの『レモンサワー』(490円税込)。昨今はSNS経由で地方からわざわざレモンサワー目当てに訪れる人もいるという人気メニューでもある。

誰にでも受け入れられやすいものは、コーヒーでありサワー。

誰にでもハードル低く、大衆ウケするもの=サワーを本気で作ったらどうなるのだろう?という想いからスタートしたメニュー。ドリンクの開発を担当したスタッフの出身地、宮崎県産のレモンをきび砂糖で漬けて作った手作りシロップに合わせるのは米or黒糖2種類の焼酎から選ぶことができる。お酒の味がしっかりと楽しめる絶妙な割り加減はお酒好きの荒岡さんのこだわりだ。レモンとオレンジの掛け合わせであるマイヤーレモンのトッピングが全体の味をまろやかにまとめ、無意識にグラスを口に運んでしまう。

左:ノクターンを聴きながら 右:レモンサワー

乾いた喉に爽やかに染み渡る1杯目を飲み干したら次は何を飲もう?と再び壁のメニューを見つめていると“名物”と銘打たれている気になりすぎるイラストと文字列…

『ノクターンを聴きながら』(690円税込)。

聞けばコーヒーとスパイスを煮詰めたシロップとビールを割ったものだという。

名前からはおよそ想像がつかなかったが、夜を想わせるドリンクのカラーに深みのある味わいと、運ばれてきて飲んでみてしっくり。名の由来がわかった気がした。

と、店内がスパイスのいい香りで満たされていることに気づく。なんだ、この香りは。「『大豆のキーマカレー』ですかね?お酒の〆に召し上がられる方も多いですよ」

それ1つください!反射的にオーダーしている自分に驚く。

それくらいテロ級の魅惑的な香り。

荒岡さん自らがスパイスの配合を何度も試行錯誤した末に産まれた、インド風とタイ風がミックスされた旨味の凝縮体。なるほど〆にふさわしく、カレーの満足感もありつつ、パクパクと完食できてしまう。
これらのメニュー、全てがお店のオリジナル、ゼロから自分たちで作り上げられているというから驚き。オーナー自ら調理も行なっている。

もちろん昼間はコーヒーやランチ・スイーツを楽しめる「カフェ」。ただ、夜も「カフェのように使ってもらいたい」という思いからこのラインナップが生まれたのだ。
気付くと、地元の行きつけの居酒屋のようにリラックスしてしまっている。

料理も、内装も。同じ思いが宿る

さらに食事だけではない。店内で強烈に印象に残るイラストもハンドペイントで描かれているという。

「誰にでもわかるものをということでピクトグラムを描いてもらいました。手書きは経年劣化すると思うんですが、それも楽しめるかなと」(荒岡さん)
ものづくりの精神が確かに宿っているのを感じる。

カウンター形式の席ゆえ、お一人様利用も多い。もちろん仲間で楽しむのもOK。お酒だけではなく、夜もコーヒーが楽しめ、アルコールが飲めない人でもOK。「好きな時に好きな食べ物や飲み物が楽しめる、食堂・居酒屋・カフェが混じるような場所を目指せたら」(荒岡さん)。

「RUTTEN_」の“_”は余白を表し、”ここでの楽しみ方は人それぞれ”という意味を込める。誰にでも楽しんでもらうため、全体的なメニューの値段もハードルが低めだ。

ものづくりの街ならではのこだわりを目一杯感じながら、どんな人にも開かれた場所で想い想いの時間を過ごす。「カフェ」の在り方が夜も目一杯表現されている店。

不思議なほど包容力を感じる、温もりのある「RUTTEN_」の夜が今宵も更けていく。

 

取材・文=森田文菜
撮影=きくちよしみ