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東京・夜こそ行きたいカフェ事情

飲みに行った帰りや時間つぶしでなく、敢えて、夜こそ、「カフェに行く」予定を入れたい。そんな魅力的なお店が東京に増殖中。さぁ、夜カフェしに、わざわざ、出かけましょう。

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本当は教えたくない、夜の図書館。最高の読書環境が約束された「fuzkue」

fuzkue (フヅクエ)

やるべきことから解放された1日の終わり。さて、美味しいコーヒーでも飲みながらじっくり本を読もう! とお店に入るも長時間同じ場所にいるのはなんだか気が引けるもの。だからといって賑やかな24時間営業のチェーン店だと本の世界に集中できない……という経験はないだろうか? そんな人に密かに教えたい、“読むこと”が主役のカフェが初台の「fuzkue」だ。

気兼ねなく過ごして。想いが詰まった深夜のブックカフェ

fuzkueのオーナーの阿久津さんは会社員をしていた頃、仕事終わりにゆっくり本を読みたいのに、理想的な読書環境を提供してくれる場所になかなか出会えなかった。そこでオープンさせたのが、深夜までじっくり本が読める場所、fuzkueだ。

店内のあらゆる場所の棚にずらっと並んだ本は全て阿久津さんが購入したもの。ジャンルも多岐に渡り、そのラインナップを見ているだけでも時間があっという間に過ぎていく。自由に手にとって読むことができる他、好きな本を持ち込んで読むのもありだ。

「ここに来た人に“気兼ねをさせないこと”が店で一番大切にしていることです」と語る阿久津さん。

1人で本を読む目的で訪れた客は、普通の飲食店ではまず長居しづらい。長時間の滞在を制限する店や、追加注文を促すような目線を感じる店すらある。そんな人たちに、気兼ねなく長居してもいいよと言ってくれるのがfuzkue。ここで過ごす人の平均滞在時間は2時間半。そんなに長くいてもいいのだろうか? と恐る恐る尋ねてみる。

「むしろゆっくりしてもらうための場所なので全然大丈夫です。逆に滞在時間が短い方が不安になります」

“読むこと”が主役のfuzkueでは気兼ねなく長時間過ごしてOK。席料はドリンクやフードなどを注文すればするほど減っていく料金体系だが、コーヒー1杯はもちろん、お酒を飲む人も食事をする人も等しく大歓迎してくれる。

また席に置かれた分厚いメニュー。めくってみると、はじめの方のページに“メニューではない文字”が目に入ってくる。実はこれら、fuzkueで過ごす上でのルールブックなのだ。他の店ではなかなか見ないものだが、その意図とは?

「通常は何度かその店に通い、過ごす人の様子を察することで店のなんとなくの決まりのようなものがわかってくるじゃないですか。そうではなくて初めて訪れた人でも安心できるように、また、ここに自分がいてもいいんだと思っていただけるように、あえて決まりを明文化しています」

実際のところ1日にfuzkueを訪れる人の約半数が初めての客だそう。初めての人が“これはどうなっているのかな?”“これはしてもいいのかな?”と不安になるのを避けるためのルールブック。例えば、“写真を撮ってもいいですか?”など、シンプルなものが多い。受ける質問に対しての答えを追記していったら、あっという間に分厚くなってしまったのだという。

“快適な読書環境”に徹底的にこだわった空間

阿久津さんがこの場所に店を構える時にこだわったポイントが2つあるという。1つは2階以上であることだ。

「お店に入るときのハードルがあった方が本を読み、過ごす人にとってより快適な空間になると考えていました。」

fuzkueは複数人で訪れても私語は厳禁。ワイワイと過ごす場所ではなく、1人でじっくり過ごすための場所であるからだ。

もう1つは窓が広く取れる空間であること。1人ずつ座れる横並びのカウンター席は広く開いた窓のおかげで圧迫感を全くあたえない。さらに隣の椅子との間隔も広い。

席の上にはスポットのライトが灯り、まるで自分だけの世界を照らしてくれているかのように本に没頭することができる。

ライトの位置、椅子の高さ。流れるBGM。全ては“理想的な読書環境のために” 計算され尽くしているのだ。

「本を読んでいて思いついたことや書き留めておきたいことなど自由に使っていただければ」と席にそっと置かれたメモとペンに至るまで、究極に快適な読書環境を約束してくれる。

どんな気分にも対応可能。豊富なフード&ドリンクメニュー

fuzkueでは本のお供となるメニューも気兼ねをさせない工夫が見える。しっかりお腹を満たす定食から軽食、おつまみ、お酒にコーヒー、スイーツまでとにかくラインナップが豊富。さらにメニューはオールタイム変わらないという。

「お客さんがどんなものを求めているか、わからないじゃないですか。食べたい!飲みたい!と思った時にそれが提供できるように考えた結果なんです」

煮物に和え物、雑穀ご飯に具沢山の味噌汁がセットされた野菜中心の定食(¥1,000)は日本人が欲する何度でも食べたくなるメニュー。ヘルシーで身体に気兼ねなく深夜にもいただくことができそうだ。

またどうしても食べたいものがある場合は持ち込みも可能だという。例えば質素な自宅で食べるのはちょっとテンションが下がるような奮発したケーキなんかをここでいただくのもありだろう。

「我々は場所と時間を売っていると思っているので。」そう語る阿久津さんの想いや配慮が店の至る所で感じられる。図書館のように本の世界に没頭できる場所、じっくり本と向き合える時間。余計なことを考えずにゆったり過ごせる、気兼ねなき究極の読書空間で自分を満たしてくれる夜を愉しんでほしい。

取材・文=森田文菜
撮影=きくちよしみ