HOME WELL BEING TOKYO WELL-BEING “東京でつながる”という幸せ モノ“だけ”のお買い物は終わる。Makuakeが創る新しい消費のトレンド
モノ“だけ”のお買い物は終わる。Makuakeが創る新しい消費のトレンド

VOL.18 モノ“だけ”のお買い物は終わる。Makuakeが創る新しい消費のトレンド

コロナ禍でEコマースの存在感が増しているが、その買い物自体も変わりつつある。モノと一緒に「つながり」や「ストーリー」がついてくる楽しさもセットで買うというスタイルが広がっているのだ。クラウドファウンディングの仕組みを使って「応援購入」に力を入れているMakuakeを例に、この新しい買い物の未来を考えてみる。 今回は、Makuake共同創業者の坊垣佳奈さんを取材。「これからはただ欲しいものを買うだけでなく、作り手を応援し、商品が世に出ていくまでのストーリーごと買う「応援購入」こそが、次の消費のトレンドとなる」という。一体どういうことなのか話を聞くとともに、今注目の商品も教えてもらった。

今注目は、家を快適にするグッズ

HarumariTOKYOでも「文喫×ビール」や「彩るスパイス時間CRAYONS」など、何度か紹介したことのある、Makuakeのプロジェクト。 実際にサイトを見ていただければわかるように、他では見ないような、「欲しいな」と思わせる商品やサービスが並んでいて、ついつい色々と紹介したくなってしまうのである。そんなMakuakeで、今は何が売れているのか?共同創業者である坊垣佳奈さんに話を聞いた。

マクアケ共同創業者/取締役・坊垣佳奈さん

「やっぱりステイホームに関するものが人気ですね。包丁とか、スマートカーテンとか。あとは音響関連、チーズケーキのプロジェクトも人気ですね。SwitchBotカーテンは朝の日差しとともにスッキリ起きたい、という意識があるのかなって。自然に気持ちよく起きることができそうで、私も欲しいです。」

その時本当に欲しいと思うモノが実現しやすいのもクラウドファンディングの特徴。今は家での時間を快適に過ごすためのグッズが売れているという。例えばこちらの「SwitchBotカーテン」は、自宅のカーテンレールに取り付けるだけで良いスマート家電で、朝になると日光を感知して自動でカーテンを開けてくれる。リモートワークなどで家に長くいることで生活リズムが乱れがちな今、人気があるそうだ。

また、百貨店などでの買い物が難しい今、6月の父の日に向けてプレゼントとなるようなものも注目されている。現在開催されているオンライン日本酒市では、日本各地の酒造が作る新しい銘酒が勢揃いしているほか、Makuake限定のお酒も多数登場している。

例えばこちらは、秋田県横手市にある創業106年の酒造「大納川」が作る日本酒。古くから酒造場に住み着いている2種類の酵母で作った日本酒を飲み比べることができる。「D-29」は、リンゴやメロンのような華やかな香りでとても飲みやすくやや辛口。「D-121」は、程よい米の旨味のある、すっきりとした中口のお酒に仕上がっている。Makuake限定のお酒なので、気になる人は早めにチェックを。

Makuakeは「応援購入」のサイト

Makuakeは、プロジェクトの実行者がサポーターを募り、見返りとして商品やサービスを提供する、いわゆるクラウドファンディングのサイトの一つだ。しかし共同創業者の坊垣佳奈さんは、Makuakeには他サイトとの明確な違いがあると話す。

「『応援購入』ができる、これが大きな違いです。日本では、2011年の東日本大震災をきっかけにクラウドファンディングが広まったこともあり、当時は『寄付』や『活動支援』の文脈が強かった。そのような場合、ある程度知名度のある人が実行者でないと、お金が集まらないことがあります。
Makuakeは、新しいものがより生まれやすくなり、広がっていくための『産業支援』の仕組みです。」

Makuakeが「応援購入」という形をとったことで、それまで埋もれていた多くのアイディアを実現できるようになったという。

「ネットが発達してより良いものを広められる環境が整った一方で、ものが溢れて選択肢が増え、何かを買う時にただ『モノが欲しい』だけではない、プラスアルファを求めている人が増えた。世の中の流れと、消費者の気持ち、双方を汲み取ったのが『応援購入』だったんです」

どうして、「応援購入」が良いのか?現在Makuakeで開催されているオンライン陶器市で考えるとわかりやすいかもしれない。

まずイベント実施の背景にあるのは、ゴールデンウィーク中に開催されるはずだった陶器市の中止。器を「応援購入」することは、販売の機会を失った窯元や作家の支援になる。これが「誰かの役に立てている実感」につながり、ただお店で買うよりも、買い物の満足度を高めるのだという。さらにステイホームで自炊をすることが多い今、家で使う食器にも飽きてきたな……というタイミングなので、直接的なニーズもある。あらゆる世の中の流れを汲み、実行者にとっても、購入者にとってもWin-Win。坊垣さんは、これこそが消費のあるべき姿だと語る。

「皆が応援したい、欲しいと思ったモノが売れる、というのが、本来あるべき姿なんですよね。今、世の中の経済の流れが逆になっていて、必要とされるより前に作ってしまったモノが、売れずに在庫になってしまっている。Makuakeの仕組みは、そういう無駄のある流れからも脱却できる可能性がある」

また、サイトではプロジェクトが完成していくまでのプロセスもしっかりと公開し、購入者側であるサポーターもものづくりに参加してもらう形をとっている。

「これも自然なことです。インターネットがこんなに発達したのに、自分が購入するものの製造過程が見えなかったこれまでの方が違和感がある。在庫過多の問題が話題に上がったり、SDGsの流れがきていたりと、作り方の部分にも注目が集まり始めている今だからこそ、ものづくりの過程を自然な形で知ってもらうことが大事」

さらに各プロジェクトには必ず「キュレーター」と呼ばれる担当者がつくのも、 Makuakeの特徴だ。プロジェクト実行者だけでは成功に導くのが難しい場合でも、キュレーターが見せ方や伝え方、発信の仕方をアドバイスすることで、グッと実現に近づくのだという。

そして、こうした仕組みにより、ヒットしたものも多い。ベルトや時計盤を自由に組み合わせられる、メイドインジャパンの時計ブランド「Knot」や、1億円以上の金額を集めて話題となった和歌山発の電動ハイブリッドバイク「glafit(グラフィット)」などは、いずれも「応援したい」という思いが集まり大成功したプロジェクトだ。

「ベンチャーや地方の中小企業が新しいモノを売り出して、ヒットする確率というのはとても低い。良いものなのに伝え方やアピールが足りなくて埋もれてしまうものがたくさんあるんです。そうしたモノを世に出す後押しができているという実感はありますね」

「インターネットでより良い世の中に」

マクアケ共同創業者/取締役・坊垣佳奈さん。リモートで取材に応じていただきました。

生産者と消費者を「応援購入」でつなぎ、ものづくりにおける新しい仕組みを生み出したMakuake。原点には、共同創業者である坊垣さんの思想も大きく関わっている。

「父親が国家公務員で、居住環境の法律などにも携わった人でした。研究者気質が強くどちらかというと国家公務員のイメージとは程遠い人で(笑)、野心を持て、世の中の役に立て、という考えを強く持っていた。社会人になって初めて仕事で昇格し役職をもらったときには『この世に生まれたからには、この世に生まれた証を残せ』っていうメッセージをもらったくらい。今はもう定年退職して、70歳を超えているんですけど、数年前に起業したんですよ。今は、競ってこられたりします(笑)そういう父親のもとで育ったので、何か価値のあるものを残したいという気持ちが強くなったのかもしれないですね」

そんな父親のもとで育ち、日に日に「何かを残さなければ」という思いが大きくなっていったという坊垣さん。大学を卒業してサイバーエージェントに入社した後も、様々な事業の立ち上げに関わり、自分のやるべきことを模索していった。

「きっかけは、広告関連事業に携わったことだったかもしれません。ちょっとした違和がどこか拭えないところがあったんですよね。広告は、ある程度金銭的余裕がある企業が、予め決められた広告予算を駆使して世の中に広めていく手法です。本当に世の中に求められているものが広まっていくかというと、そうではない。

作り手側もそうで。大企業の構造では、どうしても稼げるものを作る。稼ぐために売れるものを作っていると、本来何を作りたかったか、という本質が漏れることが多くて。そういう中で、私は本当は何にどう関わって行きたいんだろう、と思うことがあった。広告の仕組みは面白いですけど、世の中の役に立っている実感、人に喜ばれているという実感を私としては少し得づらく、もう少しものづくりの上流から携われたり、業界ごとの課題を解決するのにつながるような仕事に携わりたいな、と思うようになった」

ものを売るための仕組みを、最前線で見てしまったからこそ感じた違和感。この違和感と、長年IT分野で培ってきた経験。それらを合わせて、何かができるのではないか?そんな思いが募っていた時に、共同創業者である中山亮太郎さんから Makuake立ち上げの話を持ちかけられた。

「今みたいな時もまさにそれを感じさせられますが、当時も、インターネットには、ライフラインになれる部分、そして人と人を無限につないでいく良さがあると思っていました。そういう良い部分を、世の中を良くしていくことに使いたいと考えていた時に、 中山から話が出て。この事業なら、抱えていた思いを実現できると思ったんです」

目指すのは、本当に必要なモノが残る世界

インターネットを使い世の中をより良くしていくー。そんな思いのもと始まったMakuakeは今、「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」を目指し、着実にその歩みを進めている。今後は、どんな存在になることを目指しているのだろうか。

「新型コロナウイルスによって、オンラインの重要性が増した今、 Makuakeでできることはもっと増えていくと考えています。そのためにも、もっと当たり前に使ってもらえるツールにしたい。楽天やAmazonを見るような感覚で、こだわりを持って買い物をするならMakuake、という存在になりたいですね」

実はMakuakeの商品やサービスの満足度は総じて高く、トラブルの発生率も少ない。オンラインだけでなく、東急ハンズ渋谷店や伊勢丹新宿店など実店舗での常設販売や展示、大手企業の商品開発にも関わっている。

「ものづくりの業界がより本質に向かうと、本当に良いモノ、思いのこもったモノが残っていく。それが結果的に、今言われている社会課題の解決にもつながるのではないか思っている。壮大ですが、Makuakeで世界をそういう方向に持っていくことを目指しています」

大きな夢だと言いながら話をしてくれた坊垣さん。しかしコロナ禍で、本当に必要なものが何か考える機会が増えた今、「応援購入」によって作られる、本当に良いもの」が残る世界は遠い未来の話ではないと感じている。作り手を応援して、見守りながら一緒に作りあげたものを買う。そんな新しい買い物スタイルが、これからは当たり前になっていくのではないだろうか。

坊垣佳奈
株式会社マクアケ 共同創業者 / 取締役
同志社大学卒業後、2006年に新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。株式会社サイバー・バズの他ゲーム子会社2社を経て、株式会社マクアケの立ち上げに共同創業者・取締役として参画。主にキュレーター部門、広報プロモーション、流通販路連携関連の責任者として応援購入サービス「Makuake」の事業拡大に従事しながらも、 様々な地方エリアでの講演や金融機関・自治体との連携などを通した地方創生にも尽力。またマクアケには女性社員が多く、多様なライフスタイルを望む若い世代の活躍推進を意識した組織運営を推進している。