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渋カフェめぐり in 中目黒&代官山

雰囲気のいいカフェは沢山あるけれど、雰囲気だけに流されている自分に我に返ることもある。コーヒー・空間・ホスピタリティ。作り手たちのこだわりに溢れた“渋い!”カフェを見つければ、カフェがもっと好きになる。

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それは味わうアート。ストーリー性あふれるシングルオリジンと日本茶を

artless craft tea & coffee(アートレス クラフト ティー&コーヒー)

国内外で活躍するアートディレクター・川上シュンさん。彼の世界観が、空間はもちろん味の細部まで表現されたコーヒー&日本茶の店がある。artless craft tea & coffee(アートレス クラフト ティー&コーヒー)だ。

強いストーリーを持ったお店が多い中目黒が好き

川上さんは常時20~30のプロジェクトを抱えている。しかも、約半分は海外案件。そんな売れっ子の率いるデザインエージェンシーが「artless Inc.」だ。ヘッドオフィスは「NAKAME GALLERY STREET at 中目黒高架下」にある。

2017年5月、中目黒高架下の開業と同時に代官山からオフィスを移転。そして、原宿で2ndオフィス兼コーヒースタンドとして運営していた機能も統合し、「artless craft tea & coffee」を併設する形となった。

店舗外観。隣にオフィスがある

2016年5月にオープンした原宿の「artless craft tea & coffee」が、ここへやってきたというわけだ。なぜオフィス併設型に? そこには‘Face to face’を重んじる川上さんの哲学があった。

「オフィス自体を、フラっと立ち寄れるパブリックな場所にしたかったんです。クライアントや友人に、『ぜひお茶しに来てください』って言っても、かしこまったビルとかだとなかなか来にくいじゃないですか。でも店があれば来やすいですよね。なので、路面でオープンなところを選んだんです」(川上さん)

川上シュンさん

では、なぜ中目黒に? すると、川上さんらしい答えが返ってきた。

「高架下のファクトリーっぽさが気に入ったってのもありますけど。これまでの街より、カジュアルダウンさせてリラックスしたかったんです。最近の再開発でまた進化するなどトレンドも感じられますし、それでいて下町っぽいところもあって。強いストーリーを持ったお店が多く、あと目黒川がアイコンになって立地的にわかりやすいってのもいいですね」

聞けば、店舗として中目黒の街にフォーカスしている部分も。たとえば、スイーツの一品に近所のカステラを採用している。

店舗自体がクリエイティブのショールーム

実店舗を手掛けるメリットはほかにも。たとえば、クリエイティブワークに運営側の視点をプラスできる。さらには店舗自体がショールームとなり、顧客へのリアルポートフォリオとなる。また、「自分が理想とするお茶やコーヒーを、いつでも気兼ねなく楽しめるというのが個人的な贅沢ですね」とのこと。

店内へ足を踏み入れると、まさにそこは川上シュンの世界。キーカラーのブラックが印象的なスペース。細部まで計算し尽くされたレイアウト。コーヒーと日本茶、それぞれを淹れるツールが並び、一角には物販の棚も。また、奥にはギャラリーやコワーキングスペースの機能も備え、さまざまな企画展示も開催される。

日本独自のクラフトや美意識を随所で表現

ハンドドリップコーヒーは、注文ごとに一杯ずつ挽いて提供。メインとなる豆は、オリジナルのローストとブレンドを。もうひとつは、アジアのバリスタチャンピオンを多数輩出するマレーシア・クアラルンプールの豆を数種採用。

「僕はハンドドリップの場合、すごく浅煎りで豆本来の独特な味を大事にした淹れ方をするんです。『ARTISAN ROASTERY』 に関しては、ちょっとクセがあるぐらいなんですけど、それが僕好みなんですよね」

シングルオリジンでもブレンドでも、国や風土・生産の背景や手法などストーリー性ある小規模農園の豆をセレクト。それはもうひとつの飲み物、日本茶でも同様だ。三重・竹尾茶業の焙じ茶、京都・柳桜園による手炒りの刈番茶、京都宇治・通園の玄米茶、静岡・和田長治商店による浅蒸しの炭火茶が味わえる。

京都「開化堂」の茶筒、「金網つじ」の茶こし など、進化し続ける日本の伝統工芸品を用いる

ところで、なぜ日本茶を? そう聞くと「僕が茶道フリーク、というのが大前提ですけど」と言い、川上さんはこう続ける。

「この店自体が、本質的な日本の美意識を表現しているからです。あとは特に焙じ茶。茶葉をローストして香ばしさを出すところが、コーヒーに似てるんです。これがカジュアルで面白いなって。また、焙じ茶は他国にない日本特有の文化ですから」

聞けば、最近エスプレッソマシンを導入。世界中のプロが愛用数するシアトルの「SLAYER」 に、特別なカスタムを施した。世界屈指のコーヒー文化を育む、オーストラリア式の「フラットホワイト」をはじめ、これで多彩なラテメニューを提供していきたいと語る。

特別カスタムに関して、米国では許可を得なかったという。だがそういった難題は、川上さんの仕事では日常茶飯事。知人でもある日本の代理店に依頼して実現した

世界を渡り歩く川上さんに、中目黒に似ている海外の都市は?と聞くと、「強いていえば、オーストラリアのメルボルンですかね。コーヒーカルチャーが進んでますし。食もファッションも、街としてすごく面白いんですよ」と教えてくれた。やはり、中目黒はコーヒーの街といっていいだろう。ぜひ同店で、メルボルンさながらの一杯を!

取材・文:中山秀明
撮影:濱田晋