仕事や人間関係に行き詰まったときは、自分の内面ばかりを見過ぎてしまう傾向がある。そんな時は、ふと周りの景色、それも生き物たちを眺めてみるといい。癒されるだけじゃなく、なぜか“気づき”や元気をもらえたりするものなのだ。そんな生き物の中でも、今日は空き時間が出来たらふらっと観に行く価値のある「水族館の魚たち」を、意外なエピソードとともに紹介しよう。デートでも家族で行くでもない、推し魚に会いに行く水族館の新しい楽しみ方。
見た目、は虫類系の「チンアナゴ」。その存在を圧倒的な愛されキャラに仕立てたのが「すみだ水族館」である。約300匹のチンアナゴたちが砂にサクサクっと列をなして揺れている様子は、確かにカワイイ。よくみると、エサ(プランクトン)を奪い合って2匹がヒモみたいに絡まったり、隣同士で「シャーッ!」って声を出して(るみたいに)ケンカしていたりする。「砂から出ればいいのに」と突っ込みたくなる感じが愛らしい。たまーに砂を出て水中を揺蕩ってる子もいたりする。ほら、そんな様子をみているだけで30分は過ごせてしまう。すみだ水族館はクラフトビールを提供しているので、幻想的なライティングの心地よい館内でビール片手にチンアナゴのいる景色を眺めてる時間がいっそう至福になる。
※都の要請等にもとづきアルコールの販売を一時的に中止し対象ドリンクを変更する場合があります。
すみだ水族館
住所:東京都墨田区押上一丁目1番2号 東京スカイツリータウン・ソラマチ5F・6F
電話:03-5619-1821
営業時間:平日 10時〜20時 土日祝 9時〜20時 ※変更の可能性あり
入館料:大人2300円、高校生1700円、中・小学生1100円、幼児(3歳以上)700円
Web:https://www.sumida-aquarium.com/index.html
※土日祝・特定日は事前にWEBチケット、もしくはWEB整理券での予約が必要になります。
魚を管理するのって相当に大変。その中でもマンボウは飼育が難しい魚とされ東京近郊でも鑑賞できる水族館は八景島くらい(2021年7月現在)。マンボウってあまりに平べったく目の位置が真横にあるからなのか、進行方向の壁にゴツゴツ当たって傷つかないような工夫が必要なのだとか。1~3mにもなるおっきい体で、ただぼーっとゆったり揺蕩っている姿を眺めていても、残念ながら何も事件はおこらない。10分くらい見続けているとあまりの変化のなさに飽きてしまいそうだが、そこが「逆にいい」と思える情緒もあるかもしれない。例えば、気分が落ちているときはマンボウの大きく、悠然と、何事もなく泳ぐ姿を見て「こんな生き方をしてみたい」と慰められるかも。
横浜・八景島シーパラダイス
住所:神奈川県横浜市金沢区八景島
電話:045-788-8888(受付時間 10:00~17:00)
営業時間:平日10時〜17時 土休日 10時〜19時30分 ※施設・日により異なる
入館料(アクアリゾーツパス):大人・高校生3000円、シニア(65歳以上)2500円、小・中学生1800円、幼児(4歳以上)900円
Web:http://www.seaparadise.co.jp/
葛西臨海水族園と言えば巨大なドーナッツ型の水槽に何十匹ものクロマグロの群れがぐるぐる泳いでいる光景が見どころ。広い外洋を回遊する魚には飼育が難しいものが多く、クロマグロもそのひとつ。そんなクロマグロの群れを見られる水族館というのは世界的にも大変珍しい。その大水槽に今年6月、新入りのクロマグロがなかま入りし、より賑やかになった。もともと水槽には全長120㎝~160㎝ほどの大きなクロマグロが何匹も泳いでいたが、新しく入った1歳のクロマグロは全長80cmほどと比較的小さく、水槽に入ってすぐは底の方で新入りだけで群れて泳いでいたという。しかし次第に群れにもなじみ、エサの時間には大きなマグロに混ざってエサを食べるようにもなってきた。その姿は、センパイや上司にもまれながらも懸命に前を向く若手社員の姿に重なり、思わず「頑張れっ」と応援したくなる。
葛西臨海水族園
住所:東京都江戸川区臨海町6-2-3
電話:03-3869-5152(代)
開園時間:9:30~17:00(入園および入園券・年間パスポートの販売は16時まで)
休園日:水曜日(水曜日が国民の祝日や振替休日、都民の日の場合はその翌日が休園日)
入園料(個人):大人700円、中学生250円、65歳以上350円(※小学生以下、都内在住・在学の中学生は無料です。)
Web:https://www.tokyo-zoo.net/zoo/kasai/
※入園には予約が必要です。
魚や水生生物を専門に描く長嶋祐成さんはとても異色なクリエーター。服飾や広告の仕事を経て、現在は石垣島に在住し魚の絵を描くこと・魚との出会いを求めて水辺を旅する時間のために生きているという。そんな長嶋さんが、これまでに出会った魚たちの中から印象に残った魚を絵と文章で紹介してくれる図鑑エッセイが『THE FISH』。リアルだけどどこか温かみのある絵の美しさはもちろんのこと、彼の魚との思い出とともに綴られる文章が秀逸なのだ。もちろん、図鑑というからには、和名や学名、分類、分布といった基本情報も記載されている。魚を人感のある眼差しで描いたこの本で、あなたの感情移入できる“推し魚”をみつけてほしい。
THE FISH 魚と出会う図鑑
著者:長嶋 祐成
出版社:河出書房新社
定価:2420円
Web:https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309290799/
RECOMMENDER:
島崎昭光
Harumari TOKYO チーフエディタ