何が正義で何が悪なのか。日々社会にもまれているうちに、時々わからなくなる。そんな時は、シンプルかつ真っすぐな男たちの任侠ストーリーが刺さる。複雑な現代に必要なのは、意外とこんなヒーローなのかもしれない。
「今回は『ドンケツ』っていうヤクザ漫画です。ヤクザものってホント面白くないですか!?」(ぴんこ)
意外なチョイスがきた。しかもいつものVODではなく、漫画の紹介である。VODに限らず、日々にエンタメな時間をもたらしてくれるもの、ということで「日々是エンタメ」はより一層ジャンルレスに突き進む。
「ドンケツっていうのは、いちばん下っ端のビリッケツっていう意味です。できそこないのヤクザの話なんです」
「ロケットランチャーを撃って敵対する組を潰したことがある“ロケマサ”と、すぐチャカ(鉄砲)をぶっ放しちゃう“チャカシン”。大事なのは強いか弱いか。ただそれだけの任侠道を行く、荒くれ者のふたりが主役です。さまざまな個性強烈、クセ強な主要キャラたちが敵に向かっていく姿は、大げさにいうとアベンジャーズを観ているような気持ちになります!」
ロケマサやチャカシンが、敵対する組同士の抗争を舞台にひたすら暴れまわるのが『ドンケツ』である。この『ドンケツ』には、おすすめの読み方があるという。
「『ドンケツ』にはいろいろな男たちが登場します。その登場人物たちの“エピソード・ゼロ”が並んでいるのが『ドンケツ外伝』です。このふたつを同時に読んでほしいんです!」
「『この組長との関係はここから始まってるんだ〜』とか、『こいつが家を追い出された子供時代に、拾ってくれたのはこの人なのか〜』みたいな、人物相関図がより深くわかると、感情移入の度合いがぜんぜん違います! セリフ一言一言の重みも変わりますから。伏線の逆回収、みたいな感じ?」
外伝を読んでいると人物同士の関係がオーバーラップしてきて、任侠ものとしての厚みが増す。そしてそれは、映像ではなく漫画だからこそ味わえる楽しみである。
「映像作品になると、やっぱり映像的に面白い部分をクローズアップしてしまうので、どうしてもドンパチのシーンが多くなりがちです。でも漫画だと、心のつながり、絆みたいなものがしっかり描かれます。任侠ものは漫画で読むほうが、私が本当に見たい“男気”に触れられると思うんです」
「あと『ドンケツ』がいいのは、ただの荒くれ者で暴力ばかりに訴えるような人にも、実はそこに優しさがあるんだっていうのがわかること。まぁ、そのうえでの行動が襲撃!とか、指詰める!とかなんですけど(笑)」
言わないことが正義だったり、自分が悪者になってもいいからこの約束だけは守る、だったり。“男気”というものが、ちゃんと描かれているのだ。
「もちろんアクションが激しくて、読んでいて気分がスカッとするというのはあります。ただ、もっと注目して欲しいのは、思いやりとか絆。周りからそれがどんなに悪に見えても、自分の中の揺るぎない信念を通しきる極端な意地です。ぜひともそこを感じてほしい!」
この独特の文化や世界観は、男性だけがターゲットのような気もするが……。
「男性なら自分が共感できる任侠ものっていうのを誰もが持っていると思うんですけど、女性ってやっぱり避けがちじゃないですか。でも私は、女性こそ任侠の世界に共感できる部分があると思うんです」
「ヤクザの持っている“真の強さ”って、一般社会では女性が持っている強さに近いのかもと思うんです。女性のほうが意地みたいなのを持っている気がしていて、それを守る為に自分を犠牲にできたりする。だから、意外と女性こそ共感できる。『守るために死ぬ!』ってほど過激じゃないですが、登場人物たちが張っている意地みたいなものは、よくわかるはず。だから先入観を捨てて、女性にも読んでみてほしいです!」
自分ではまず触れる機会のない、ある意味で異世界の話。届きそうで届かない。だけど何だか爽快だし、心を揺さぶられる。日頃のモヤモヤも吹き飛ばしてくれるような強さが、『ドンケツ』にはある。
取材・文:中山秀明
コンテンツセレクト:岡野ぴんこ
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