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東京・夜こそ行きたいカフェ事情

飲みに行った帰りや時間つぶしでなく、敢えて、夜こそ、「カフェに行く」予定を入れたい。そんな魅力的なお店が東京に増殖中。さぁ、夜カフェしに、わざわざ、出かけましょう。

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知る人ぞ知る「ヨル15℃」。朝から絶えず賑わう人気ベーカリーカフェの“夜の顔”とは?

ヨル15℃

モーニングにランチ、テイクアウトまで、カジュアルに楽しめるベーカリーカフェ「15℃」。勝手に“明るい時間に訪れる場所”だと思い込んでいたけど、一味違う楽しみ方ができるらしい。実は、カフェ15℃は夜、その姿を変える。

近年、人気ベーカリーやカフェがひしめき合い、またたくまに激戦区と化した代々木公園エリア。中でも、日本橋の有名百貨店にも直営店ができるほどの超人気ベーカリー「365日」は、その代表格だ。

365日の自慢のパンを使ったメニューが食べられるのが、姉妹店のカフェ「15℃」。代々木八幡、代々木公園どちらの駅からも徒歩1分ほど。3種類の食パンの食べ比べができるモーニングセット、ランチにはハンバーガーや名物の鰯サンドなど、こだわりのパンを使用したメニューを求めて、朝早くからひっきりなしに客が訪れる。テイクアウトのパン、本格派スイーツも次々と売れていく。

実は、いわゆる“人気ベーカリーらしい”活気を見せるカフェ15℃には、昼とはまったく異なる“夜の顔”があるのだ。

その姿を現すのは18:00を過ぎてから。日が暮れて薄暗くなった路地に店からぼんやりと灯りが漏れ、ムーディーな雰囲気を醸し出す。同時にカフェ15℃は店じまい。そして「ヨル15℃」のお目見えだ。

ヨル15℃はカフェ15℃とは別の姿。昼のカフェのまま夜まで営業していると思って来ると、そのギャップに驚く。活気ある昼の様子から一転、暗く落とされたライティングや美しいしつらえのテーブルセッティグは、隠れ家ビストロさながらだ。明るさと賑わいで昼には目立たなかったカウンターのワイングラスも、柔らかなライトでキラリと光り、存在感を放つ。客層もガラリと変わる。ヨル15℃を知る大人たちだけが、集まってきているのだ。

一瞬、流行りの間借りレストランかのような変貌ぶりに驚くが、メニューには確かに「15℃」の文字。入口にはパンも並ぶ。一体どういうことなのか――。ルーツは本店の365日に隠されている。

365日は、ベーカリーでありながら「食のセレクトショップ」を謳う。全国各地から厳選した食材をパンの具材やカフェのメニューとして使用するほか、米や調味料などの物販も行っている。「365日の食の積み重ねが人と心と体を作る。その日々の食事の大切さを感じて欲しい。」という想いからだ。それをもっとも色濃く表しているのが、ここヨル15℃。「福岡糸島 仔鹿 炭火焼」「雲仙 長崎の在来種野菜 農家風スープ」「桑名の沖縄しじみ サフラン リゾーニ」。産地と食材にスポットを当てた本格的なメニューがラインナップする。

そんな中「人気ベーカリーカフェ」としての一面を残すのが、ヨル15℃のスペシャリテであり、スターターとして確実に抑えておきたい「パン寿司」。一見すると大きなネタがのった寿司だが、よく見るとネタを支えているのはシャリではなくパンだ。

365日の角食をトーストし、バジルマヨネーズ、アボカドのピューレを重ね旬の鮮魚をのせる。この日の “2貫” は、宮崎県産のキハダマグロ(写真左)と千葉県産のイワシ(写真右)。これ以上パンが大きくても小さくても崩れてしまうであろう、小麦の甘みと脂ののった魚の絶妙なバランス。パンこそ使われてはいるが、間違いなく料理として完成されている。「ここはヨル15℃だ」とのお知らせも兼ねた、絶妙なスターターの一皿。気づけば、ワイングラスに手が伸びる。昼のカフェとは一味違う、ヨル15℃の愉しみの始まりだ。

猪の塩漬け肉 赤米たまご カルボナーラ(円 税込)

 

そのアルコールも、この店には欠かせない。自然派ワイン、日本各地のクラフトビールや他の店ではなかなか出会えないこだわりの日本酒まで、豊富に取り揃える。農家直送野菜を使った前菜、ジビエなどの肉料理にはもちろん、国産小麦100%のパスタに合わせるのもいい。例えば、生で仕入れた能登の猪肉から2日間かけて作る自家製パンチェッタと、赤米を食べて育った愛知県産の新鮮な卵で作る濃厚カルボナーラも、シメではなくワインや日本酒とともにいただきたい。

人気ベーカリーと言われれば、本格的な料理と合わせてやはり自慢のパンも食べたい。それなら「ヨルパン」を添えておくのもいいだろう。より料理や食材をおいしく味わうために作られた、夜だけの特別なパン。パスタのソースに絡めるもよし、肉料理と一緒に食べるもよし。各地の食材のおいしさと、夜のパンの愉しみ方を教えてくれる。

次の客に席を譲る心配もランチタイムのリミットに追われる心配もいらない。予約ができることはもちろん、テイクアウトのパンやスイーツもゆっくり選べるのもヨルの特権だ。翌日の朝ごはんパンも忘れずに確保しよう。

大人の恋愛トークに花を咲かせるもいい。カフェやパン屋には興味がない彼や旦那も満足させられるに違いない。人気ベーカリーカフェの別の顔、ヨル15℃。親しい人にだけ、こっそり教えてあげたい。

 

取材・文:RIN

撮影:きくちよしみ