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東京珈琲探訪 with Vaughan

世界中のコーヒーショップを1,000軒以上巡るVaughan。コーヒー界ではカリスマ的存在の彼は、2009年にコーヒーの街メルボルンから東京へやってきた。そんな彼の「TOKYOフェイバリットカフェ」は、僕らの予想を超える意外な場所だった。

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珠玉の建築を堪能。四ツ谷「喫茶ロン」

Lawn(ロン)

1件目は、四谷の駅のほど近く、モダニズム建築で有名な建築家の高橋靗一氏が手がけた趣のある喫茶店「喫茶ロン」。なぜ、Vaughanはこのお店を1軒目の「マイフェイバリット」に選んだのか、その想いを聞いていこう。

-四ツ谷って、用がない限りはいかないし、ふらっと来る場所じゃないイメージの街ですが、どうやってこのお店を知ったんですか?

「かなり前だからあまり正確には覚えてないんだけど・・確か、モノクルマガジン(イギリスのライフスタイル誌)のエディターから聞いたのが初めてだったと思う。彼ら一度ここを貸切ってクリスマスパーティを開いたんだって。その時の写真を見たんだけど、カーブした石の入り口や、ヴィンテージの赤いレザーのソファ・・もうそれを見た瞬間から、『行きたい場所リスト』のトップ入りを果たしたよね!エディターさんはいつも街のいい情報をくれるんだ」

-なるほど。実際に訪れてみてどうでした?

「もちろん最高!入った瞬間から昭和にタイムスリップしたようだね。昭和みたいっていうのは1954年に建てられたからだね。エントランス、照明、壁に埋め込まれたスピーカー、螺旋階段・・・。僕は普段階段って嫌いなんだけど、でもこの階段のデザインは駆け上がったり、踊りながら降りたり(笑)したくなっちゃう。『喫茶ロン』は珠玉の建築。疑いようもなく東京の真の宝だよ!」

-じゃあ今回フェイバリットとして選んだのはこの「建築」が理由?

「店内の細かいディテールも同じくらい大事だよ。ロゴデザイン、灰皿の中のコーヒーかす、あとヴィンテージのピンクの電話。これ、なんと現役!(取材中に実際にこの電話がなり、一同その懐かしい音色にビックリ!)挙げていったらキリがないくらい、素敵なところがたくさんある。来るたびにまた新たに何かを発見してビックリするし、すごく影響を受けるんだ」

-なるほど。確かに、ピンクの電話は新鮮です。他にも発見があるそうですね。

「今回撮影で来て教えてもらったんだけど、1階の壁に何か「模様」がついているように見えるよね。これって、人の頭の跡なんだ!長い長い間、お客さんが壁にもたれた時に当たる頭の部分が変色して模様みたいになってる。カウンター側を向いて壁にもたれかかりながらマスターたちとお喋りしているお客さんたちの姿が想像できるし、それが長年のこのお店の風景なんだね」

-すごい!お客さんがどうやって過ごしているか、想像つきますね。普段、Vaughanはロンではどうやって過ごしていますか?

「『オフライン』を楽しんでいるかな、ここでは。だいたいいつも1階席。オーナーたちや、常連さんとお喋りしたりしてる。多分僕の頭も壁にもたれてると思うよ!(笑)いつも日々のニュースや些細な出来事なんかを話している。この間僕、鍵をなくしちゃったんだけど、みんなに相談したら、どうやって防ぐかを一緒に考えてくれたよ。ロンはまるで、家のようだね。
僕はコーヒーを飲みながら、他の人たちの生活や頭の中を覗くのが好きなんだ」

-では、いつも地元の人たちとお喋りしている感じ?賑やかなお店ですね!

「いや、実は螺旋階段を上った2階には、東京の喧騒から逃れられる空間があるんだよ。スケジュールの合間や静かに過ごしたい時にはそこ。世界を遮断して自分の心臓音しか聞こえない空間で一人の瞑想に集中したり。仕事の打ち合わせにも適した空間だよ」

-ちなみにお気に入りのメニューは?

「いつも同じメニュー!コーヒーと、名物『タマゴサンド』。真っ白なパンと玉子焼きスタイルのタマゴサンド。僕はそこにちょっとだけ塩をかけちゃう。オーナーの小倉ひろあきさん曰く、ロンはタマゴサンド発祥の地なんだって。僕はそれを信じてる」

-そういえば、この場所で初めてとなる音楽イベントをやったらしいですね?

「そうなんだよ!最初はもう5年くらい前かな?全部のテーブルと椅子を外に出して、ラガフォンズっていうオーストラリアの6ピースのジャズバンドを呼んだんだ。100人以上のお客さんが来て、みーんなで歌ったり踊ったりした。老若男女みんなで踊って歌って、あれは最高だったな。盛り上がるように、日本の歌謡曲とかも練習して披露してもらったんだ!Instagramで検索すれば雰囲気も見られるから、検索してみて。
それから喫茶ロンが主催する音楽イベントを何回かやっているんだ。ライブハウスじゃないところでやる音楽イベントってとても特別感があるよ。今ではすごく親密な関係だね」

-楽しそう!老若男女っていうのがいいですね。ちなみに通常営業で、喫茶ロンでかかる音楽は好き?

「彼らはいつもビートルズしかかけないんだ。それって最高じゃない? 」

-Vaughanは「新しいもの」より「古いもの」が好きっていうことなのかな? もちろんここは、古いだけではないのだけれど。

「うーん。難しい質問だけど、イエスかな。『変化と発展』は、東京で普通に生活していると自然に目にする部分だと思う。なので、長年の間続いている何かを経験したり触れたりすることはとっても嬉しい。喫茶ロンは自分自身に立ち返って古典的なロマン主義を感じることができる。最近日本はまた突然、喫茶店が大きなブームになってるよね。結構多くの店が閉店してしまっているので、長く続いている喫茶ロンは本当に素晴らしい!」

 

Profile

Vaughan(ヴォーン)

PHOTO:Satoru Tada

オーストラリア・メルボルン出身。東京に住んで10年以上。日本のコーヒーカルチャーを世界に発信するインフルエンサー。モデル、音楽プロモーター、イベント企画、キュレーターなど100の顔を持つ東京セレブリティ。
www.vaughan.tokyo
instagram @vja

撮影:濱田晋
意訳:稲垣美緒(Harumari TOKYO 編集部)
撮影協力:喫茶ロン