HOME WELL BEING HOKKAIDO(北海道の旅の今) “暮らすような旅“で北海道の魅力を再発見。フードライターが語る、Withコロナ時代の食と旅
“暮らすような旅“で北海道の魅力を再発見。フードライターが語る、Withコロナ時代の食と旅

“暮らすような旅“で北海道の魅力を再発見。フードライターが語る、Withコロナ時代の食と旅

コロナ禍で大きな打撃を受けた飲食業界や生産者。北海道も例外ではないと、その実情を話してくれたのはフードライターの小西由稀さんだ。取材や講演活動などで北海道中をまわる小西さんだからこそ語れる北海道の食、そして旅について話を聞いた。

「どんなお話をしたらいいのか、正直悩みますね」。インタビュー中、何度も「悩む」と話していた小西さん。それもそのはず、取材をした7月時点では、大手を振って「お越しください」とはなかなか言えない状況だからである。だが、コロナに負けじとできる限りの対策を行っている飲食店や施設が多いのもまた事実だ。

フードライター 小西由稀さん

「それぞれのお店が、自分たちにできることに実直に取り組まれています。混雑を生み出さないようSNSで客入り状況をアナウンスしているお店もあれば、思い切って業態を変えたお店も。すべては安心してご利用いただきたいという思いからです」

フードライターとして北海道中を飛び回り、産地の生産者との交流も篤い小西さん。コロナウイルスの影響を受けてのホテルや飲食店の休業、営業時間の短縮、観光客の減少は、食材を提供する生産者にも大きな打撃を与えたという。

「例えば、今年はサクラマスが豊漁だったのですが、コロナの影響で出荷が進まず、価格が下がってしまったと聞きました。こうした影響下でテイクアウトやデリバリー、通販などに取り組んだ産地や飲食店、メーカーは多かったですね。あるバーではなんとカクテルキットを販売していました。おうちでバーの味を楽しめるようにと。とてもユニークですよね」

通販などは苦境を乗り切るための苦肉の策だ。しかしこうした挑戦は、新たなファンとの出会いという、思わぬ喜びをもたらしてもいるという。

「お取り寄せなどで新しいお店や、知らなかった北海道の魅力を知った……という話を耳にします。気持ちがふさぎがちな日々の中、食は大きな楽しみ。私も自粛期間中、食べ物にずいぶんと助けられました。家で食べるのもいいですが、やはりプロの技が生み出す出来立てのお料理は格別です。状況が落ち着いたら店にぜひ足を運んでもらいたいですね」

一度は沈静化したかに見えたコロナウイルスだが、今また全国で猛威を振るい、人々の生活スタイルを変えつつある。小西さんはその変化を、冷静に前向きに見つめていた。

「リモートワークという働き方が社会に定着しつつあります。この、どこにいても仕事ができるようになったという変化は、人々と北海道の『接し方』も変えていくでしょう。今後は、中長期的に旅先に滞在する、いわば『暮らすような旅』という旅行スタイルも選択しやすくなっていくのではないでしょうか」

コロナ禍で注目されつつある「ワーケーション」。長期休暇の最中に仕事時間を取り入れる新しい働き方で、最近では政府も盛んに推奨している。自宅でのリモートワークから外に出て、ワーケーションなど旅行先で仕事をするスタイルが定着すれば、小西さんの語る「暮らすような旅」も現実味を帯びてくる。

そして長期滞在によってこれまで見られなかった、感じられなかった旅先の魅力も体験できるようになる。地元スーパーでしか買えない旬の食べ物に、限られた時期や時間帯にしか見られない自然現象や風景……。「暮らすような旅」であれば、北海道に住む人々が「もっとみんなに見てほしい!伝えたい!」と願う、北海道のディープな魅力に巡り合えるチャンスが格段に増える。それは旅する人にとっても、きっと幸せなことのはずだ。

「もちろん、これまで通りの旅もいい。いろいろな旅のニーズ、スタイルに応えられる度量が北海道にはありますから、不安なく行き来できる状況になったら、ぜひ足を運んでください。そしておいしい空気を胸いっぱいに吸い、思いっきりリラックスできる時間を過ごしてもらえたらと思っています」(2020年7月撮影)

小西由稀
室蘭市出身。厨房から海、畑、牧場まであらゆる場所へ取材に赴き、おいしさの背景にある生産者や料理人の思いも伝えるフードライター。著書に「小西由稀の札幌【おささる】味手帖」など。