Harumari TOKYOに何度もご出演いただいている“我らが姐さん”こと夏木マリさん。舞台、映画、音楽活動など多彩に活躍されているマリさんも今は活動停止を余儀なくされている。今の心境、そして私たちが「いつかのためにいまできること」で何をすべきか?電話取材にお応えいただいた。
ご無沙汰しております!昨年のフリーペーパーご出演以来となりますが、お元気ですか?
元気よー。家にずっといるから体がなまっちゃっているけど(笑)。
ですよね…。今、いろんな活動ができない状態ですよね。
3月のブルーノートLiveが延期。印象派の舞台も6月に控えていたんだけど、早々にシビウ国際演劇祭から2021年に延期の連絡がはいってしまったの。印象派国内公演も全て来年にスライドしようとなりました。
舞台は稽古をしなくちゃいけないし、それもままならない状況ですものね。
そうなの。私たちには稽古の時間が必要だから。稽古場に集まれないということは、私たち(プレイヤー)にとっては死に等しい。
ファンとしても楽しみにしていたので残念です。ご自宅ではどんな風に過ごされていますか?

撮影:HIRO KIMURA
ゲーテの言葉に『急がずに、だが休まずに』って、そういう心境になって。急ぎはしないんだけど、休まないで、ね。今こんなに時間があって、2か月ももらっちゃったのは、クリエイションをもう一回やり直せってことなのかな、って思う。
やはりインプットに活用されるわけですね。
でもね、そう簡単でもないの。今まで見られなかった本とか映画とか、テーブルに積んであるんだけど。それも、あんまり手を付けられないでふにゃふにゃしてる(笑)。
マリさんですら、そうなんですね…。
みなさんもそうかもしれないけど、時間があっても急にこんな状況になるとリズムがつかめないものね。
最初から決まっている長期休暇だったらいいけど、いろんなものが全部途中でストップすると、切り替えは難しいですね。
クリエイションって、火事場の馬鹿力みたいにギリギリになっていいものをバンバン創っていくことの方が多いじゃない?だから、終わりのない休暇みたいなのがあっても、どうなのって (笑)。でも、だんだん慣れてきたから、前に進もうかな、と思っているところです。
終わりが見えない中でもその先を見据えてアイデアを出し続けたいですね。
ギリシャ悲劇の時代から、疫病やチフスはあって、その時代もみんな演劇をやりつづけている。シェイクスピアだって、パンデミックのさなかにすごい作品残したりしているじゃない。だから、できる人はできるし、できない人は落ちていくんだな、と。いつも崖から飛び降りろと言ってるけど、命があればそういうことが明確になってくるから。
去年インタビューした時に「崖から飛び降りる」話があって。今まさに、崖から飛び降りた感じですね(笑)
まだ、ぶらさがってる感じ?(笑)
そうかも(笑)
飛び降りたら飛び降りたですっきりするんだけど、ぶら下がってるとね。爪の先が痛いみたいな(笑)。ちょっと痛みを伴っちゃって。
その痛みをクリエイションに変えていくことも出来る。
クリエイションをしている人間は、作品を創りたいとか残したいとか伝えたいとかいう、ちょっと焦りはあるから、急がずに、だけども休まずに、っていうことでやっていければなぁと、私も思ってます。
ご自宅で過ごしながら世界をみていて、なにか感じたことはありますか?
メディアやインターネットのいろんな人たちの言動を見ていると、人のインテリジェンスがわかって面白いわね。自分も含め、「私ってこんなバカだったかな」って(笑)。
僕も思います。人間の業が出るというか。
これまでちゃんと生きてきた人は、ちゃんと動いているしね。あと、優しさも感じることもある。あ、この人ってこんなに優しい人だったんだ、とか。人の観察も面白い。
この状況下で、ご自身の中での気づきとか心境の変化はありましたか?
今考えてることはね、「本当の幸せってなんなのかな」ってこと。私たちはふだん、幸せを求めて生きてるじゃない。だけど、こういう風に時間を与えられると、本当の幸せって何だろうって思う。今みんな、考えさせられちゃってるのかな、って。
「幸せ」ですか。当たり前のことが当たり前じゃなくなった時に、本当に必要なものも研ぎ澄まされてくる感じはします。
なんだか、孤独とか、幸せとか、基本的なことを考える、すごい時間になっちゃいましたね。
そんなことを四六時中考えされられる時間がくるなんて。
ほんとにね。

感染者や亡くなられている方の数も増えていって、仕事を失っている人も沢山いる。そういう方じゃなくても不幸を感じているひとも沢山いると思うんです。大切な人に会えなくなったり、好きなことができなくなったり、目標の過程で不条理にストップさせられたり…。
きっと、自分のリズムが大きく乱されたということに、みんな傷ついていて。ここからもう一度、どういう生き方があるのかっていうのを探る、知恵を使うことになってくるんじゃないかなって思う。
そこで、どうやってモチベーションを保っていくか。
歴史の中で災害とか未曽有の状況って大なり小なり繰り返されていくじゃない。そういう時って何か「人間として考えろ」って言われているみたいで。「あなたならどうするの」って言われてるような。
はい。
だから、こういう時のために人間はいろんな経験や知見を積み重ねてこなければいけないのに、ガサっと来た時に打たれ弱いな…って。でも人間は強いはずだから、頑張れるはずなのよ。頑張る方法が今ちょっとわからないだけで、いつかきっと前に進める。
だからじっくり自分を見つめ直す時間でもあるわけですね。
そう。それで、自分の好きなこととか、やりかけていたこととか、そういうのを一気にやってみる、そのリズム作る。
いい意味で時間はたっぷりある。ただ何もしないと時間は無為に過ぎていく。
私は、料理の腕があがっちゃって…(笑)。
インスタで拝見しました(笑)
その上でね、長い人生の中では「ほんの一瞬」と考えてみるの。これから、人間の生き方も変わってくると思うんだけど、「こんな時もあったね」って笑えるように「あの時、私頑張ったな」って言えるように、しておかないと。次の何か異変に、また打ちのめされるっていう繰り返しになるから。
時間はありますからね。
でも一日はあっという間に過ぎるのよ。
肝に銘じます(笑)。次は対面してお会いしたいですね。
ぜひ。やっぱり、同じ空気を吸って、Face to Faceで話すっていうのは普段から心掛けていることだし、昭和の人間なので、会わないと、ね。温度感とかわからないじゃない。
今こそ、それがどれほど幸せな空間であるかを実感しますね。
そう。
ではまた近いうちに!
さて、あしたは大沢伸一さんのSTAY HOME AND GET READYをお届けする。

夏木マリ
73年デビュー。80年代から演劇にも活動の場を広げ、芸術選奨文部大臣新人賞などを受賞。93年からコンセプチュアルアートシアター「印象派」でエディンバラ、アヴィニヨンなどの演劇祭に参加。09年パフォーマンス集団MNT(マリナツキテロワール)を立上げ主宰。ワークショップを通じて後進の指導にも力を入れ、その功績に対しモンブラン国際文化賞を受章。近年、音楽活動ではジャジーでスタイリッシュなステージを「MARI de MODE」と題し、Blue Note TOKYOで開催し好評を博している。また、新人アーティスト2020(ドゥゼロドゥゼロ)のプロデュースという新しいアプローチも積極的に展開。俳優としては、多数の舞台・映画・ドラマに参加し、数々の賞を受賞。その他、途上国への支援活動「One of Loveプロジェクト」の代表をつとめるなど、多岐にわたる活動を精力的に続けている。